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メールマガジン

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        化学物質国際対応ネットワークマガジン 第2号    
           http://www.chemical-net.info/
              2007/10/04 配信
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このメールマガジンは、化学物質国際対応ネットワークのウェブサイトから
配信登録をされた方を対象にお送りしています。

第2号は、以下の内容をお送りいたします。

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☆ [1]三井化学のREACHへの対応状況と課題 ネットワーク事務局
☆ [2]情報交換BBSの利用について          ネットワーク事務局
☆ [3]海外化学物質管理事情            化学品安全管理研究所 大島輝夫
☆ [4]中国の環境関連動向         ネットワーク事務局
☆ [5]環境省からのメッセージ          環境省化学物質審査室
☆ [6]あとがき                 ネットワーク事務局
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[1]三井化学株式会社のREACHへの対応状況と課題    [ネットワーク事務局]

 化学物質国際対応ネットワークの幹事団体である三井化学株式会社を訪問し、
 生産・技術本部安全・環境部ご担当者にREACHに関する取組についてインタビュー
 を行いました。以下はその概要です。

                            
【三井化学の化学物質管理方針】
 三井化学は、経済・環境・社会3軸での業績評価を行っており、この3軸に基づき
 経営の基本戦略を策定している。REACHやGHSなどの化学物質管理の新しい
 施策も3軸に基づく経営戦略の下で前向きに取り組んでいる。

【REACH予備登録準備状況】
 2008年6月1日からの予備登録開始に向けて、社内でREACH連絡会を設け、2008年3月
 末までに準備を完了することを目標として対応にあたっている。REACH連絡会は安全
 ・環境部を事務局とし、事業部、購買部、法務部の関係部で構成され、事業部毎に
 設置したレスポンシブル・ケア(RC)担当者を中心に分類や予備登録要否の検討な
 どREACHに関する製品毎の取組を行なっている。ここで2008年3月を目標としている
 のは、その後に予備登録のデータ入力等に必要な時間を取っているためである。

【SIEF/コンソーシアムについて】
 SIEFについては、社内啓発段階であり、製品毎に予備登録後を想定して個別に対応を
 行っている。SIEFがはじまった時点で対応をとるのでは遅いので、前倒しで準備を
 進め、SIEF参加シナリオ(リードレジスター、積極的参加者、非積極的参加者の3分
 類)を想定し、製品毎のケースを検討している。例えば、高生産量化学物質(HPV)
 に関連するプログラムにおいても参加者の顔がお互いに見えている場合と見えてい
 ない場合があり、それにより対応が異なるのではないかと推察している。さらに、
 ファイン化学品とバルク化学品では、対応の戦略が異なると認識している。
 ファイン化学品では、自社圏単独事業であると想定され、自社である程度のコントロ
 ールが可能である。一方、バルク化学品では既存データは多く存在するものの予備
 登録者は多くなると想定され、資金等のハード的な対応よりも、交渉力などのソフ
 ト的な対応力が重要になってくると思われる。
 SIEF業務は、基本的にはアウトソーシングする予定であるが、日本にはこのような
 リソースが不足している。このようなサービスを提供している海外の日本代理店等
 へのアウトソーシングも考えられるが、REACH登録代行業務にかかるコンサルテー
 ションだけでは意味がなく、その後のソフト的な対応能力が重要な鍵を握って
 いる。さらに、SIEF/コンソーシアムで力を発揮できることもアウトソーシングの
 必要条件と考えている。

【SVHCに関する情報公開】
 SVHCに関係する情報開示請求は、今のところ外部事業者からの数件に過ぎず、内容も
 一般的なものであった。SVHCリストが公表されていない現状を踏まえ、出来る限りの
 対応をしているが、リスト公表後は正確なデータに基づく的確な対応が必要になる
 と認識している。このような情報の取り扱いは、これまでにもグリーン調達やRoHS
 でも対応してきているので、それらの経験を活かしてREACHでも対応して行く予定
 である。なお、規則第33(2)条規定の消費者からの情報提供に関する対応には、SC
 上の全関係者による適切な対応が必要であると考える。

【認可物質と制限物質への対応】
 認可物質に関しては、一般的なケアをしてはいるものの、具体的な対応はこれから
 である。必要なものについては代替化の検討を早めに進めていきたいと考える。
 制限物質に関しては、基本的に三井化学では取り扱いがないと認識している。製造
 を検討するとしても、社内ルールにより上市前に社内でリスク対便益評価を行ない
 自ずと制限がかかる仕組みになっている。

【CSRの作成】
 CSRに必要な暴露シナリオの作成は、不確定要素が多く適切なシナリオの検討が
 困難な場合は、特定用途以外の販売を控えるという選択肢もあり得ると考えて
 いる。ハザード評価は外部にアウトソーシング可能であると認識している。しかし
 ながらリスク評価は、部分的にアウトソーシング出来たとしても、社内で実施する
 体制を構築する必要がある。具体的には、暴露シナリオの妥当性評価や、リスク
 評価結果の適性判断を自社内で行なう必要があり、関連する人材育成も必要と
 なっている。三井化学ではREACHやGHS等の環境変化に適応できるよう、
 昨年安全性評価、情報の専門部署として製品安全センターを設立し、安全性に係る
 技術基盤の強化を図っているところである。

【サプライチェン(SC)における情報伝達】
 REACHが要求しているリスク・コミュニケーションは、現状の日本の状況に照らして
 考えた場合、SC全体をカバーする情報伝達においてかなり困難な部分があると考え
 る。この課題に対し、三井化学は、事業部、購買部等の関係部が一体となり、
 三井化学を中心とする近傍のSCまではカバーしようとしているが、それ以上の範囲
 になると自社だけの努力では苦しい面があると認識している。
 REACHで求められる提供情報のうち、安全データシート(SDS)に関しては、従来
 からの社内体制、仕組みで対応して行けると認識している。しかしながら、製品
 含有化学物質情報の伝達については、アーティクルマネジメント推進協議会
 (JAMP)等の産業界の取組を注視しながら、自社としても仕組みを構築していき
 たいと考える。

【REACHの課題】
 REACHのワーカビリティに検討の余地があると認識しており、三井化学では担当者を
 決めて出来る限りの対応はしているものの、国内のSC域内全体で機能させることが
 出来るのか懸念している。
 REACHは、化学物質に関係するSCのステークホルダー全体で対応すべき管理規則で
 あると考えているが、現在の状況は川上側により大きな負担がかかっていると
 いわざるを得ない。当社やその他多くの素材メーカーは、物質そのものを欧州に
 直接輸出していないにも関わらず、川上に位置するものとして自主的にREACH対応
 の準備を始めている。しかしそうではあっても、川上に対する情報提供をしない
 限り、川中・川下ユーザーは、REACHのカバーはされないということを確実に認識
 して頂けていない危うさが一部にある。
 また、SIEFに関しては、ハード的な対応に加え交渉を含むソフト的な対応を日本の
 事業者がどのように取り組んで行くかが最大の課題である。


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[2]化学物質国際対応ネットワーク情報交換BBSの利用について
                            [ネットワーク事務局]

 8月21日に化学物質国際対応ネットワークの「情報交換BBS」の機能提供を開始しま
 した(以下URL参照ください)。この機能は参加団体の方のみ利用可能です。
 http://chemical-net.info/bbs/modules/BBS_toppage/
 現在のところ、欧州の化学物質規制フォーラム、中国の化学物質規制フォーラム、
 韓国の化学物質規制フォーラム、その他の化学物質規制フォーラムの4つのフォー
 ラムを立ち上げています。各フォーラムの中では、ご自由に関連トピックを設定
 する事も可能です。化学物質国際対応ネットワークに参加をいただければ、どな
 たでもBBSの意見交換に加わる事ができます。

 REACH等の新しい化学物質規制については、事業者ごとに個別にご対応しておら
 れると認識していますが、サプライチェーン全体での対応が求められていることか
 ら川上から川下までの全ての段階の事業者を含むAllJapanでの対応を推進すること
 がより効果的な化学物質管理につながると考えます。これに関し、投稿記録が残る
 事から、みなさまにはBBSへの書き込みに抵抗がある方も少なくないと思われます
 が、積極的に参加をいただけましたら幸いです。

 なお、化学物質国際対応ネットワークでは、今後、中国及び韓国の政府関係者等と
 の意見交換の機会を設けることとしており、ネットワーク参加団体のみなさまから
 BBS上で両国の政府関係者等への質問事項を募集することも検討をしています。
 どうぞよろしくお願いします。


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[3]海外化学物質管理事情(その2) 「REACH 成立の背景とその理念」
                     [化学品安全管理研究所 大島 輝夫]

 REACH は、2006年12月30日の、欧州官報L396、1〜849頁に公示された。このうち、
 前文と本文は、1〜234頁、附属書は、235〜849頁である。この表題は、「 REACH
 に関する2006年12月18日付 欧州議会および理事会規則(EC)No 1907/2006」で
 あるが、さらにこの表題の一部として、"指令1999/45/ECの修正、欧州化学物質庁
 (ECHA)の設立および理事会規則1件、委員会規則1件、理事会指令1件、
 委員会指令4件の廃止"が併記されている。REACHの理解を深める為に、成立の背
 景、これら廃止・修正された理事会・委員会の規則・指令の説明、さらにREACHの
 理念と意義を述べる。

 1 EUの組織
 EUの加盟国は2007年1月1日にブルガリアとルーマニアが加盟し27カ国となった。
 公用語は23国語である。

 欧州理事会(EUROPEAN COUNCIL):各国の元首から構成される。

 欧州議会(PARLIAMENT):欧州市民の直接投票により選出された議員から構成さ
 れ、多数決で議決する。フランスのドイツとの国境のストラスブ−ルにある。欧
 州議会は1999年に発効したアムステルダム条約により、機能や権限が強化され、
 現在は閣僚理事会と立法権を共有している(EC条約251条)。REACHも欧州議会と
 閣僚理事会の各の最終案の調整に手間がかかったが、両者の最終調整案を欧州議
 会は多数決で可決した。

 理事会(COUNCIL):閣僚理事会とも呼ばれ、EU27カ国を代表する閣僚により構成
 され、多数決制である。ブリュッセルにある。

 委員会(COMMISSION):EUの行政執行機関で、多数の総局(Directorate General)
 があり、ブリュッセルにある。

 環境総局(Environment Directorate General):環境政策を担当し、その下に
 局(Directorate)、課(Unit)がある。“DG”は“Directorate General”の略
 である。この総局には、総局長事務局、A局(コミュニケーション.法的問題、
 民事)、B局(自然環境保護)、C局(気候変動、大気)、D局(水質、化学物質、
 土壌)、E局(国際関係、生命)、F局(資源)、G局(持続性ある開発と統合)
 がある。D局にD1.化学物質課がある。

 裁判所(EUROPEAN  COURT of JUSTICE):法人や個人を対象とする第1審裁判所
 と公務員裁判所とがある。ルクセンブルグにある。

 会計検査院(COURT of AUDITORS):ルクセンブルグにある。

 2 EU立法(EC条約248条)
 EUで発効される法規等には、以下の種類がある。

 規則(Regulation):直接加盟国に適用され、EU域内の各国の政府や民間の行動を
 規制する法令である。REACHは規則である。

 指令(Directive):指令が欧州官報に公示されると、その指令に従い、加盟国は
 国内法規を、3年以内に改定せねばならない。ある国が対応しない場合、欧州裁判
 所に告訴されることがある。指令は「最低要求」で、各国の国情などに応じてより
 厳しくすることができる。実際にドイツの化学品法(ChemG)は、1979年に公布され
 たEUの第6次修正指令に基づいて1982年1月に施行されているが、EUの1993年に公
 布された「既存物質の評価と管理に関する理事会規則793/93」の公布以前から、
 既存物質について、ドイツ連邦政府に製造・輸入業者に対して、毒性などの報告
 を義務付ける権限を与えていた。
 なお、EU設立条約の根拠条文によって上乗せ規制ができる場合(例:175条環境
 目的のWEEE指令)とできない場合(例:95条市場調和目的のRoHS指令)がある。

 決定(Decision):適用対象を特定の国、企業、個人などに限定し、対象となる
 国 企業、個人などを直接拘束する。

 勧告(Recommendation):加盟国、企業、個人などに一定の行為や措置をとること
 を期待することを、欧州委員会が公表するもので、法的拘束力はない。

 意見(Opinion):特定のテーマについて、欧州委員会の意志を表明するもので、
 法的拘束力はない。

 3 REACH以前のEUの化学物質規制
 主要なものとして、次の4つがある。(REACHの前文9)

 (1)危険な物質の分類表示:理事会指令67/548/EEC 1967年6月27日付:「危険
 な物質の分類、包装、表示に関する加盟諸国の法律、規制、行政規定の近似化に
 関する指令」本来危険な物質としての分類基準を定め、それに従って表示、包装
 を規定した指令である。

 (1-1)新規物質の届出:この指令の第6次修正理事会指令79/831/EEC 1979年9月
  18日付により、EUに新規化学物質の届出制度が導入された。製造業者あたり年間
 1トン未満の製造・輸入は簡易届出でよい。

  (1-2)第7次修正理事会指令92/32/EEC 1992年4月30日付:製造業者あたり年間1
  トン未満も10kg以上は毒性データなどを要求、1トン以上は水性生物に対する試験
  を要求、危険な物質の引き渡し時にMSDS(SDS)の伝達を規定

 (2)危険な調剤の分類表示:欧州議会および理事会指令1999/45/EC1999年5月
  31日付:「危険な調剤の分類、包装、表示に関する加盟諸国の法律、規則、行政
  規定の近似化に係る指令」調剤(preparations)は混合物および溶液をいう。従
 来の調剤指令88/379/EECを廃止し、新たに環境に危険な要件を加え、危険な調剤
 のMSDSの提供を義務とした。

 (3)危険な物質と調剤の規制:理事会指令76/769/EEC 1976年7月27日付:
 「危険な物質および調剤の上市と使用の制限に関する加盟諸国の法律、規制および
  行政規定の近似化に関する指令」危険な物質と調剤の上市と使用の禁止・規制を
  定めた。

 (4)既存物質の情報の報告と試験の指示:理事会規制793/93 1993年3月23日付:
 「既存物質のリスクの評価と管理に関する規制」製造・輸入量に応じて毒性情報、
 用途などの情報の報告を求め、それに基づいて、加盟国はリスク評価を行い、
 直ちに配慮を必要とする優先物質のリストを作成し、追加の情報と試験結果の提供
  を製造・輸入業者に義務づける。
 なお、新規化学物質の届出は、製造・輸入国に届出を行うことが決められているの
 で、審査の厳しい国もあり、EUとして整合は図られるが、最初の判断が覆ることは
 難しい。
 このように、規制・指令の運用について加盟国に不一致の問題があり、また予防原
 則に従い公衆の健康および環境を保護するためにさらに行動する必要性があること
 を確認した。
 
 4 REACHにより改廃された規則・指令
 上記の3(2)の指令1999/45/ECは修正。3(3)の指令76/769/EECは廃止。
 3(4)の規則793/93は廃止。3(1)の67/548/EECはREACHの表題に改廃は記載
 されていないが、REACHと同時に12月18日付で発令された欧州議会及び理事会
 規則2006/12/ECにより修正されている。
 以上の他に、REACHの表題に記載されている廃止される委員会の規則、指令は
 以下の通りとなっている。

 (1)委員会規則(EC)No.1488/94 1994年6月28日付:今回廃止される上記の
 3(4)の1994年6月28日付の「理事会指令(EEC)No.793/93に従った既存物質
 の人と環境に対するリスクアセスメントの原則」

 (2)委員会指令91/155/EEC 1991年3月5日付:既に廃止されている調剤指令の
 「88/379/EECの第10条の実施について危険な調剤に関連した特定の情報システムの
 詳しい配置の定義と提示の指令」第10条はMSDSの実施に関する条項で、MSDSの内容
  を具体的に定めている。

 (3)委員会指令93/67/EEC 1993年7月20日付:「理事会指令67/548/EECにより
 届出された物質の人と環境に対するリスクのアセスメントの基準の理事会指令」は
 届け出られた新規化学物質のリスクアセスメントの具体的な基準を定めている。

 (4)委員会指令93/105/EC 1993年11月25日付:理事会指令67/548/EECの改正「理
  事会指令67/548/EECの第7次修正指令の第12条の関する技術的書類に要求される
 情報を含むAnnex VII Dの実施についての指令」第12条はポリマーの届出に関する条
 項であるが、Annex VII Dは第7次修正指令の公布時には白紙であったので、届出に
 必要な項目を定めている。

 (5)委員会指令2000/21/EC 2000年4月25日付:「理事会指令67/548/EECの第
 13(1)条の5項に関連した、理事会法令のリストに関連した指令」第13条(1)条の5項
 は、同等の届出・承認手続きが存在し、その製品分野のみに使用される物質の免除
 されるリストの指定についての項目。農薬とバイオサイドの活性成分とそのための
 研究開発を目的とする物質の免除を指定

 以上がREACHの表題に記載されている改廃する規制、指令の内容であるが、
 この他にREACHが関係する規制は40あり、これらを統合することにより、単純化され
 るといわれている。

 5 REACH制定に至る経過の概要
 1998年4月 欧州環境理事会は、現在の化学品法規の見直しを検討することを欧州
       委員会に要請した。この時に見直しの対象とした、化学品管理に関す
       る規則・指令は3の(1)(2)(3)(4)の4件である。
    11月 委員会はこの4件の検討課題の調査報告書を作成。
       12月 閣僚理事会が承認。未評価既存化学物質の取り扱いにも言及

 1999年2月 この報告書の下に、加盟国の代表、規制担当者、科学者、産業界、環境
             および消費者NGO 等の関係者とワークショップを開催し問題点を把握
       欧州委員会は、EU の大学の学者に委託し米国、日本などの意見を調査、
             日本でも関係機関を訪問し、(社)日本化学物質安全・情報センター
       も講演会を開催し、要望のヒアリングを行った。
    6月 欧州理事会は上記を踏まえて、35項目の理事会の結論を公表し、
       委員会に対して、白書の作成を要請した。この理事会の報告は、予防
             原則、持続可能な開発の原則を念頭におき、さらにいくつかの事項を
             反映することを欧州委員会に求めた。
             この中には、製品の安全性に関する十分な情報を使用者および公衆
             に提供する責任を、製造業者から工業的使用者にいたる「製造連鎖」
             に負わせるとともに、その情報を公開する仕組みを作ること、内分泌
             かく乱システムに影響をおよぼす物質を特定し評価することなども含
             まれている。

 2001年2月 委員会 白書「今後の化学品政策のための戦略COM (2001) 88」公表
             この白書に REACH のシステムが提案されていて、今日の REACH の大
             枠が記載されている。

 2003年5月 欧州委員会 REACH 委員会のパブリックコメントの案「Consultation
             Document」を公表し、意見募集を、5月15日〜7月10日の間に、応募者
       を政府、業界、中小企業、個人などに分類して行い、約6000件の意見
             が寄せられた。
             42%は企業または企業団体からであった。イギリスなど5つの EU 内
             の政府、日本、中国、米国など13の外国政府、OECD、APEC、日本の
             各種業界団体なども意見を寄せた。
  10月29日  EU委員会はパブリックコメントを参考にして、REACHの提案文書公表、
             この案について欧州議会、理事会が各討議、

 2004年    欧州議会全員の改選があり、また閣僚理事会の議長国が任期満了によ
       り、イタリアからフィンランドに交代した。

 2005年
   11月17日 欧州議会第一読会で修正案採決
  12月13日 閣僚理事会 政治的合意 

 2006年
    6月12日 欧州委員会案に対する閣僚理事会は「共通の立場、Common Position
             (EC)No17/2006」によりREACH全文についての理事会としての修正案を
       公表
   11月30日 閣僚理事会とそれより規制を強化する案の議会は、協議を重ねた末に
             30日の深夜に妥協案を合意した。これにより一時は成立が危ぶまれた
             REACHは成立の見通しがついた。
   12月13日 議会 合意案を多数決で可決。賛成529、反対98、棄権24、反対は高
             懸念物質に対する代替の取り扱い、1トン〜10トンの取り扱いを不十分
       などとする環境グループである。
   12月18日 閣僚理事会 合意案を採択
   12月30日 EU官報に公示 

 2007年
  5月29日  1箇所の誤植を訂正して、EU官報にREACHを再掲載
       O.J.L136 3〜280 2007.5.29
        2006年12月30日付EU官報にREACHと同時に公示された、理事会指令
       67/548/EECの誤植の訂正も掲載 L136 281〜282頁
    6月 1日  REACH順次部分的に施行

 6 REACH の理念
 (1) 人の健康および環境の高レベルでの保護
 これは REACH にはじまったことではないが、3-1)に記載した、理事会指令 67/548
  をはじめとして、すべてのEUの化学物質規則、指令の実施は人の健康と環境の保護
 を同じレベルで、扱っている。人の健康には労働者の健康も含まれている。

 (2)No Data, No Market
 これはREACH第5条の表題である。既存化学物質と新規化学物質を同等に登録の対象
 とする。REACH以前、従来新規化学物質は第7次修正指令(3(1-2)に記述)によ
 り、上市量が10kgを超える前に、その物質の人の健康と環境に対するリスクを試験
 し評価することを義務付けている。
  さらに量が多い物質については、長期的・慢性的影響を中心にしたより詳細な試験
 が要求されて、市場には約2700種類の新規化学物質がある。既存化学物質は、上市
 されている全物質の総重量の99%を占めているが、同様の試験要件は適用されてい
 ない。
 一方、現在年1トン以上、上市されている既存化学物質は約3万といわれているが、
 市場の既存化学物質は、特性および用途に関するデータが不足している。そこで、
 REACHでは既存化学物質と新規化学物質とを同等に扱い、製造・輸入量に応じて既
  存化学物質についても製造・輸入量に応じ一定の試験データなどの登録制度を導入
  し審査を行う。

 (3)高懸念物質は優先的規制対象
 高懸念物質は認可の対象とする。その対象となるかもしれない物質は、第57条には
 以下の通りと定められている。
 (a)発がん性、変異原性、生殖毒性(CMR)のカテゴリー1,2の分類物質
 (b)難分解性、生物濃縮性、および毒性物質(PBT)
 (c)極めて難分解性、高い生物濃縮性物質(vPvB)
 (d)内分泌かく乱性を持つ物質、或いは(b)および(c)のクライテリアを満たさ
 ないがPBT,vPvBの性質をもつ、人の健康または環境に深刻な影響があり得そうな科
 学的根拠があり、(a),(b),(c)に列挙されたその他の物質と同等のレベルの懸念を
 生じ、ケース・バイ・ケースで特定される物質 
 内分泌かく乱化学物質については、白書の序文および4.3にも記載されている。
  この点について、2006年11月の議会と閣僚理事会との合意の時にも議論の一つの
  課題となったと伝えられている。
 付属書XIVは高懸念物質のリストであるが、現在は白紙である。高懸念物質が
 成形品中に、生産者または輸入業者あたり年間1トンを超える量で存在し、かつ
 0.1%以上含まれる場合には、届出が義務となる(第7条2)前文(115)には呼吸器
 感作性にも言及している。

 (4)予防原則の立場
 予防原則に従う。前文(9)を参照。

 (5)代替物質開発の促進
 高懸念物質を認可する時に、認可の要件として、全ての認可を申請する製造業者、
 輸入業者および川下のユーザーは、代替物の利用可能性を分析し、それらのリスク
  ならびに代替の技術的、経済的実現性を考慮しなければならない(第55条)。
 代替品の取り扱いについて、議会と閣僚理事会の妥協の時の争点となったと伝えら
 れる。

 (6)EU化学産業の競争力の維持と強化
 以下の項目は、EUの化学産業のみでなく、日本の化学産業にとっても歓迎すべき
 ことである。
 1)登録の対象
 3(1)(1-2)に記載した第7次修正指令は年10kg以上の新規化学物質の届出を
 義務づけているが、新規化学物質の届出件数は、米国のTSCA,日本の化学物質審査
 規制法に比べて少ない。それで第6次修正指令の時に戻して、登録の要件を年1トン
 以上とした。第6次修正指令は 年1トン以上であったが、国によっては、面積が
 狭い国もあるので、製造・輸入量がこれより少ない新規化学物質についても、試験
 データと共に届出を要求する国があり、整合性のために、第7次修正指令では、
 年10kg以上としていた。
 2)製品およびプロセス指向の研究開発(PRORD)を目的とする場合の登録の一般
 的義務の免除
 第9条を参照。なおECHA(欧州化学物質庁)から、「科学的研究開発(SR&D)
 および製品とプロセス指向研究開発(PRORD)のガイダンス」が2007年6月に発行
 されている。第7次修正指令の研究開発免除の条件の量および期間の制限を大幅に
 緩和した。 

 (7)川下も含めたリスク管理(ばく露情報などのサプライチェーン間のコミュニ
 ケーション)
 化学物質のリスクアセスメントを行うためには、ばく露情報は欠かせない。しかし
 物質の用途に関する情報の入手は困難である。そこで川下ユーザーにも用途、
  ばく露情報の 提供などを義務つけている(第37条)。
 川下ユーザーの定義第3条(13)では、その工業的、職業的な活動の過程において
 物質それ自身であれ、調剤中のものであれ、製造業者または輸入業者以外の、
 物質を使用するEU内のあらゆる自然人または法人を位置づけている。流通業者また
 は消費者は川下ユーザーではないことに留意。
 タイトルVは川下ユーザーの表題で、第37〜39条を定めている。第1, 2, 3, 4,
 28, 36, 40, 50, 51, 52, 53, 56, 62, 65, 66条など、及び前文(16),(55),(56),
 (58),(59),(59),(60),(61),(66),(82),(86)などに川下ユーザーについて記載して
  いる。欧州化学物質品庁(ECHA)は「Guidance for Downstream Users」を発行し
 ている。

 (8)成形品中の化学物質も対象
 REACHの非常に大きな特徴は成形品(Article)中の化学物質について、製造業者、
 輸入業者に対して登録と届出の義務を課していることである。また成形品のサプ
 ライチェ−ンにも要求される情報伝達の義務を課している(第7条)。これにより成
 形品中の化学物質が、予想される使用条件で放出されるように意図されている場合
 或いは高懸念物質が含有される場合に登録を義務付けて、成形品に含有されている
 化学物質の、人の健康あるいは環境に対する保護を図っている。これは特に輸入さ
 れる成形品に影響するであろう。
 第1,2,3,5,7,8,9,14,21,22,28,33、50,58,62,67,68,69,72,113条など、及び前文
 (16),(17),(29),(56),(58),(73),(74),(75),(85),(86),(87)などにアーテイクルに
 ついて記載している。ECHAが発行したREACH実施プロジェクト(RIP)3.8「成形品
 に含まれる物質に関する要求事項についての技術ガイダンス文書」(案)は環境省
 により仮訳が発行され、ネットワークのホームページにも公開されている。

 (9)リスクアセスメントの責任を産業界に移す
 従来3(4)に記載したように「既存物質の評価と管理に関する理事会規則」
 793/93により、提出された情報に基づいて当局がリスク評価を行い、必要な試験の
 指示を製造・輸入業者に指示していたが、優先物質の選定に時間がかかり、試験の
 指示は多くなかった。それでREACHはリスク評価の責任も業界に移し、年10トン以
 上の化学物質に対して化学品安全性報告書の作成を義務付け、川下ユーザーにも用
 途、ばく露の報告を義務付けた(第37条)。REACHによりハザード評価の責任が
 産業界に移管されたと誤解している向きもあるようであるが、従来もハザード情報
 に関する試験の責任は製造・輸入業者にあった。REACHの意義はリスク評価をまた
 ずに、製造・輸入量に応じ、川下ユーザーも関与して試験を行い、登録することを
 義務付けた点にある。

 (10)動物試験の軽減
 動物愛護の見地から、タイトルIIIを設けデータの共有および不必要な試験の回避を
 定めている。情報交換フォーラム(SIEF)もその手段である。(第25〜30条)

 (11) 中小企業への配慮
 SMEに対して登録料の軽減などの措置がとられる。

 (12)情報公開

 (13)秘密保持への配慮

 (14)認可に際して社会経済的配慮

 以上がREACHの主な理念である。


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[4]中国の環境関連動向                [ネットワーク事務局]

 今回は、中国の化学物質管理と補償や住民参加手法などに新たな方向性が見られる
 水汚染防治法に対するパブリックコメントを追ってみました。

 1 中国の国家環境保護総局(SEPA)が、2007年9月19日に既存化学物質名簿の
 2007年版を公表しました。
 出典:国家環境保護総局 化学品登記中心 2007年9月18日
 
http://www.crc-sepa.org.cn/news/NEWS_detailT0.aspx?TitID=113&T0=2&T1=2&T2=0&T3=0&T4=0&T5=0&T6=0&LanguageType=CH

 2 中国の新規化学物質届出
 中国の新規化学物質の届出のための試験は、水性毒性のみ中国に生存する指定
 された種を使い、中国内の試験機関で試験することが義務付けられていますが
 これに関してSEPAの化学品登記中心が7月10日にホームページ上で17ヶ所の測定
 機関を公表しています。公表内容の概略は以下SEPA公開情報のURLのとおり。
 出典:国家環境保護総局化学品登記中心ホームページ 2007年7月10日
 
http://www.crc-sepa.org.cn/news/NEWS_detailT0.aspx?TitID=106&T0=2&T1=2&T2=0&T3=0&T4=0&T5=0&T6=0&LanguageType=CH7

 3 中国がREACH施行に併せて代表事務所を設置
 中国は欧州化学物質庁(ECHA)の業務開始に合わせ、ECHAのあるヘルシンキに
 大型の化学代表事務所を設立することになった。
 出典:JETRO 2007年9月20日
 http://www.jetro.go.jp/biz/world/europe/topics/48807
 
【参考情報】韓国のKorea Environmental Council in Europe(KECE)のプレス
 リリースによると、2007年9月25日にブラッセルに民間企業を対象としたREACHヘル
 プデスクを開設したことが案内されました。
 http://www.korea-helpdesk.eu/Reach/Korea_EU_REACH_Helpdesk_25_Sep_2007.pdf


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[5]環境省からのメッセージ             [環境省化学物質審査室]

 メールマガジンのご愛読ありがとうございます。ウェブページ開設以来、おかげ
 さまで順調に読者数が伸びており、現在800件を超える登録をいただいております。
 このネットワークは、化学物質対策に係わりのある様々な関係者に「参加」いただ
 くことで、国際的な化学物質対策についての国内関係者の理解と対処能力の向上と
 諸外国の関係者との相互理解の向上による国際調和に向けた取組の加速化を目的と
 するものです。皆様には、是非、BBSなどを通じて、情報の交流、疑問点の解決
 などを図っていただきたいと思います。また、ウェブページのコンテンツである
 各国の法規制に関する情報、FAQに掲載する内容等は、ネットワーク参加団体から
 のニーズを反映したものにしていきたいと考えております。特に、いわゆる中小
 企業の方々のニーズは、私どもが直接つかみづらい状況にありますので、下記の
 URLからの情報提供などで、必要な情報、対応に必要なニーズなどを事務局宛てに
 是非お寄せいただきたいと思います。
 できるだけ、双方向の情報交換により、意味のある情報発信をしていきたいので、
 ご支援とご協力を今後ともよろしくお願いいたします。
 http://www.chemical-net.info/contact.html


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[6]あとがき                     [ネットワーク事務局]

 東京では、秋雨が降る気温の低い日が続くかと思えば、本格的ではないものの夏の
 名残のような気温の日も戻ってきたりして、体調を崩しやすくなっています。
 みなさまの所在地ではいかがでしょうか。
 さて、REACHではRIPの3.5-1の最終報告書が、European Chemical Bureauから
 9月14日に公表されました。中国は、ヘルシンキにREACH対応代表事務所を設け、
 韓国もブラッセルに民間企業を支援するヘルプデスクを開設したようです。
 このようにREACHの本格稼動に向けた各国の動きが活発化してきており、日本でも
 関係各社毎に呼び登録に向けた準備作業が進んでいると認識しています。
 このような背景を踏まえ、REACHそのものを探ることも重要であると考え、今号
 では、大島さんにその成立の背景と理念を整理していただきました。
 また、化学物質国際対応ネットワーク・情報交換BBSでは、開設後しばらく立ちま
 したが、みなさまにご利用いただけていない状態が続いています。これは、参加者
 にとっての情報交換BBS自体のニーズが計れないためであると認識しています。
 事務局でも努力していく所存ですが、この点についてみなさまからの情報発信に
 関するご協力をいただければ幸甚です。
 どうぞよろしくお願いします。

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化学物質国際対応ネットワークマガジンをご利用いただきまして、
ありがとうございます。

■本マガジンは、平成19年度環境省請負業務により開始され、
  社団法人海外環境協力センターが運営しております。
  社団法人海外環境協力センター  http://www.oecc.or.jp/
  環境省総合環境政策局環境保健部 http://www.env.go.jp/chemi/index.html

■原則として、毎月1回の配信を予定しています。
 メールの配信については、回線上の問題(メールの遅延、消失)等により
 届かなかった場合の再送は行いませんので、予めご承諾の上、ご利用ください。
 なお、バックナンバーについては、後日ネットワークのホームページに掲載
 する予定です。

■本マガジンの配信停止・配信先e-mailアドレスの変更及び
 ご意見・ご感想・ご要望等は、以下のホームページよりご連絡下さい。
(このサイトに関するお問合せ http://www.chemical-net.info/contact.html)
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発行元:社団法人海外環境協力センター
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