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メールマガジン

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        化学物質国際対応ネットワークマガジン 第6号    
           http://www.chemical-net.info/
               2008/03/21 配信
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このメールマガジンは、化学物質国際対応ネットワークのウェブサイトから
配信登録をされた方を対象にお送りしています。

第6号は、以下の内容をお送りいたします。

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☆ [1]韓国のREACH対応等に関する現地調査結果概要    ネットワーク事務局
☆ [2]海外化学物質管理事情             化学品安全管理研究所 大島輝夫
☆ [3]メールマガジン第4号への質問回答    化学品安全管理研究所 大島輝夫
☆ [4]あとがき                     ネットワーク事務局
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[1]韓国のREACH対応等に関する現地調査結果概要        [ネットワーク事務局]
韓国の産業資源部(MOCIE)の主催でREACH産業支援センター他が協賛する「第1回
REACH登録エキスポ」に参加し、韓国の政府機関と産業界のREACHの対応状況を視察、
情報収集を行うとともに、関係者と意見交換を実施しました。
以下はその概要です。

1.調査期間
 2008年2月17日から2008年2月20日まで

2.調査先
(1)REACH登録エキスポ2008(2008年2月18日)
(2)韓国環境部(MEK)(2008年2月19日)

3.調査結果概要
【REACH登録エキスポ2008】
本エキスポのプログラムは以下の通り。参加者は、運営者を含め約300名で、立見者
が出るほど盛況だった。
(1)登録
(2)開会
(3)産業資源部のEU REACHサポート 
(4)エキスポEXPO出展団体の紹介(サービス内容を聴取)
(5)REACHにおける予備登録と登録 (SGS, Dr. Diana Poon)
(6)在欧韓国環境評議会(KECE)の活動紹介(Mr.Dae Young PARK)
(7)2008年6月1日/何をしなければならないか (Pr.Lucas Bergkamp)
(8)IUCLID5 と登録(Mr.Cor Verhart, Royal Haskoning)
(9)REACHにおけるITシステム
(10)REACHにどう対処するか/日本企業の事例紹介 
   (E&Eソリューションズ、橋本真也氏)
(11)REACH 実行評価 (Son Won Co., Ltd.)
(12)閉会

エキスポのプログラムにおける主要なプレゼンテーション内容は以下の通り。
(1)韓国産業資源部のEU REACHサポート
 ○REACHに関する政府機関による産業界支援は、環境資源部、環境部などが実施
 ○産業資源部は、2007年に産業支援センター(www.reach.or.kr)を設立し、
  タスクフォースチーム(http://www.coreach.net/)を結成して積極的に対応
 ○産業資源部のタスクフォースチームは、情報交換のためのインフラ整備が目的、
  同インフラを通して各種関連情報の提供や有害物質データベース(DB)の運営
  管理を実施
 ○有害物質DBのデータの認定作業は行っていない。
 ○予備登録やREACH-ITに関してセミナーやワークショップを開催、関係者のキャパ
  シティ・デベロップメントを実施
 ○産業界のニーズ調査を継続的に実施、必要な対応を検討
 ○REACHに関する経験は少ないので、対応できる専門家を養成中
 ○500の企業を抽出し、REACHの関連情報を普及する役割を付与
 ○ロードマップを作成し、グリーンテクノロジーの導入に努力
 ○オーナーシップはあくまでも産業界にあり、政府機関はその活動を支援する立場
 ○REACHは一企業のみで対応することは困難なので、WTOのルールに従って情報提供
  コンサルテーション、GLP/構造活性相関 (QSAR)トレーニング、専門家招聘など
  の間接的な支援を積極的に実施
 ○韓国におけるREACH対応として、キーを握るのは唯一の代理人(Only 
  Representative(OR))なので、ORリストを提供するとともに、韓国化学工業専門
  協会(KSCIA)(http://www.kscia.or.kr/english/)他機関を通してREACHの
  プレコンソーシアム活動を支援


(2)エキスポ出展団体の紹介(ここでは個別に取材した各社のサービス内容を記載
   した。)

 1)TSGE (WWW.TSGEEurope.com)
 取材先:Mr.Mattew Curl, Senior Regulatory Scientist
 ○イギリスをベースにグローバルにREACHに関する総合コンサルテーション
  サービスを展開、各分野の専門家を揃えて対応を実施
 ○韓国へのビジネス展開は、非常に有望だと思考
 ○日本に関しては個別の企業と協力しているが、全体的な方針が見えにくいのが
  課題

 2)Intertek Testing Services Ltd., Shanghai
   (www.intertek.com or www.intertek.com.cn)
 取材先:Dr.Ursula Schumacher, Global Manager, REACH Business Unit
 ○上海をベースにREACHコンサルテーションビジネスを展開、上海の事務所は、
  2年前に設立し、53名の従業員を擁し、2か所のGLPラボ(カナダ人の専門家が
  急性リスク評価を指導)を所有、リスク評価担当者は9名
 ○世界中に100か所以上の事業拠点を展開
 ○中国以外ではインドの事業拠点も強化しており、顧客のニーズに応じて対応する
  事業拠点の選択を実施
 ○EUでは2010年に殺生物剤の規制を見直すことになっており、アジアのリスク評価
  能力の向上に向けてビジネスチャンスを広げる戦術を展開

 3)Reach Only Representative Ltd. (www.rorltd.com)
 取材先:Dr.Ben Gandhi, Director
 ○イギリスを拠点にREACHのORサービス業務を展開、中国ですでにOR業務を開始し
  ているが、韓国での事業展開にも注目
 ○試験を含むREACH総合コンサルテーションでは、高額なサービス経費が必要であ
  るが、ローカルコンサルタントを活用しつつ、OR業務に特化したサービスを提供
  することにより、コストエフェクティブなREACH対応オプションを提供
 ○試験コストは、物質情報交換フォーラム(SIEF)の参加メンバーでシェアされる
  のであるから、その部分にローカルコンサルタントを活用し、コストを抑えると
  ともに、OR業務の中でその試験データの評価結果を担保するような形で、OR業務
  に特化

 4)H2 Compliance
 ○12)のLee International/ IP & Law Groupと提携してサービス業務を実施

 5)Chemtopia Co., Ltd./ CHEMWATCH 
   (www.chemtopa.net and or www.chemwatch.net)
 取材先:Dr. Sang-Hee Park, Representative、
     Ms.Aynur Bozkurt, Director Business
 ○化学物質関連データベースを開発し、REACH対応支援サービスを展開している。
  基本的には提携している日本ケミカルデータベース株式会社(JCDB)のサービス
  と同様

 6)Nam & Nam International Co., Ltd. (GmbH Europeと提携) 
   (http://www.namandnam.com/)
 取材先:Mr.Benjamin Morris
 ○ドイツを拠点にREACHに関する総合コンサルテーション・サービスを実施、
  ORとしての業務も展開

 7)KTR  (www.ktr.or.kr)
 ○REACHに関する総合調査・分析業務サービスを提供

 8)e-CMS solution
 ○化学物質管理に関する専門家グループによるサービスの提供

 9)KIST Europe (www.kist-europe.de)
 取材先:Dr.Ki Cheoi Kim, Research Scientist
 ○欧州を中心に第三者の代理人(Third Party Representative)、情報分析、
  データ収集、化学物質安全性評価業務などを展開、このような個別業務以外に
  欧州との研究協力事業を展開

 10)SGS, Consumer Testing Services Environmental Service 
   (www.sgslab.co.kr)
 取材先:Dr. Jason Han, Executive Director
     Dr. Dianna Poon, Senior Consultant
 ○世界中に100か所以上の事業拠点を展開、スタッフ数は約48,000人で、
  ワンストップREACH対応サービスを実施
 ○主な業務内容は、トレーニング、試験、コンサルテーション・監査、
  コンソーシアム・マネージメント

 11)RCC Ltd.(www.rcc.ch)
 取材先:Mr.Seung Woo Song
 ○経験と知見を基にコンサルテーションやconsortiaマネージメントサービスを
  提供
 ○韓国事務所のスタッフは6名程度

 12)Lee International/ IP & Law Group (www.leeinternational.com)
 取材先:Mr. Yoon S. Shin
 ○Leeインターナショナルグループ傘下の Institute for Trade & Investment
  (初期コンサルテーション、総合調整)を中心に、Hunton Williams(戦略的な
  法務コンサルテーション)、H2 Compliance(専門家集団)、Korea Testing &
  Researching Institute(試験機関)とネットワークを形成してREACH
  ソリューションを提供
 ○1社単独で対応するのではなく、専門分野を活かしてネットワークを形成する
  ことにより、コストとパフォーマンスに優れたサービスの提供を行う戦術を展開

 13)REACH Business Service Center/ Korea Institute of Industrial 
   Technology
   (www.reach.or.kr and www.kncpc.re.kr)
 取材先:Mr. Kwang-Hoi Jo, Senior Representative
     Mr. Mong J Kwon, Researcher
 ○産業資源部の下で産業界のREACH対応を支援
 ○活動予算は政府予算で、主要な活動はセミナーやワークショップ開催による
  トレーニング・人材育成、コンサルテーション・サービス
 ○環境部のREACH対応支援組織とはセミナー共催等で連携

 14)Eco-Fronttier (www.ecofrontier.com)
 取材先:Mr.Yongdo Jung, Associate
 ○欧州のパートナーグループとともにREACHソリューションを提供
 ○環境分野全般に事業展開し、持続的開発分野についても事業展開を実施
 ○スタッフ数は90名で、6名がREACH業務を担当
 ○韓国企業の「UNID」および「KUMHO」とREACHに関する総合コンサルテーション
  サービス契約を締結
 ○韓国内の35か所の関連専門機関と提携

(5)REACHにおける予備登録と登録 (SGS, Dr. Diana Poon)
 ○REACHの予備登録及び登録に関する一般的な説明

(6)欧州産業環境協議会(KECE)の活動紹介
 (Mr.Dae Young PARK, Secretary General)
 ○KECEの紹介
 ○化学物質国際対応ネットワークを含む提携先(関係機関)リストの紹介
 ○企業(Solvayグループ(http://www.solvay.com/))の対応事例紹介
 ○亜鉛酸化物を対象にREACH登録の方法を紹介
 ○韓国REACHヘルプデスクの紹介
 (http://www.reach-helpdesk.kr or http://www.korea-helpdesk.eu)

(7)2008年6月1日/何をしなければならないか (Prof. Lucas Bergkamp)
 ○マネージメントリスクの説明
  契約/商業的な調整と制約/知的財産の保護/インスペクション/一般クレーム
  への説明義務/取引における継続的な対応探究
 ○REACHに伴う責任
  規則の遵守/不確実なデータ使用の危険性/契約/Consortiumアレンジメント/
  製品リコール/競争法抵触回避(生産量、生産方法)に留意
 ○OR(コンソーシアム対応/企業秘密の確保には有効/効率的な対応)
 ○ワンストップREACHサービスの活用
  注):2008年6月より、REACHの予備登録が開始される。

(8)IUCLID5と登録(Mr.Cor Verhart, Royal Haskoning)
 ○IUCLID4からIUCLID5への移行には一部注意が必要
 ○ユーザーフレンドリーな設計となっているが習熟が必要
 ○IUCLID5の目的
  Row Data(導入)/ Dossier(提出)/ Annotation(法的コメント)/
  XML(情報共有)
 ○IUCLID5トレーニングの開催(3月18日〜20日)
 ○詳細な情報はhttp://www.be-reachable.com/default.aspxを参照
 ○Pricewaterhouse Coopersと提携してサービスを提供

(9)REACHにおけるIT システム
 ○IUCLID5の詳細な説明

(10)REACHにどう対処するか/日本企業の事例紹介
  ( E&Eソリューションズ、橋本氏)
 ○E&Eソリューションズの紹介
 ○REACHに関する環境省のアンケート結果紹介
 ○テュフズート(TUV SUD)と化学物質評価研究機構(CERI)の協力
 ○ケミカル・ライフサイエンス社(RCC)と石油化学工業協会(JPCA)の提携
 ○必要経費
  予備登録/OR経費/登録費用(技術一式文書、CSR、SDS)
 ○エチレン/プロピレンのコンソーシアム
 ○サプライチェーンにおける情報集約(MSDSplus/AIS)
 ○Rossetta Netの紹介
 ○韓国及び日本他のアジア地域におけるREACH対応における連携強化(毒性データ
  の共有等)が喫緊の課題

(11)REACH 実行評価 (Son Won Co., Ltd.)
 ○2007年からタスクフォースチームを形成して対応
 ○SWOT分析
  Strength:率先対応が要求、Weakness:データベースの欠如、
  Opportunity:政府の支援、Thread:迅速な登録準備
 ○REACH対応切り分けのためのアンケート調査を実施予定
 ○ターゲットは関係者の緊密な連携・協力とデータ収集
 ○プレ・コンソーシアム活動(約50物質に関与)
 ○REACH対応事項(例:ポリマー)の確認とそれに対する戦略的な対応が必要
 ○情報提供及び総合的なREACHサービスの提供


【韓国環境部REACHタスクフォース調査概要】(www.reach.me.kr)
 取材先:Mr.Joenhhoon Anh, REACH Task Force, MEK
 Mr.Jang, Il-Suk
 Mr.Bongin Choi, Expert Advisor, ENVICO
 Mr.Kyoung Mook Lee, KCMA
 Ms.Hwajung Lee, Expert Advisor (ヘルプデスク)
 Ms.Sunhee Lee, Resercher (ヘルプデスク)
 ○韓国環境部の一部署である環境政策オフィスはREACHタスクフォースの他に大気
  管理および水管理等の計4業務を担当
 ○タスクフォースのスタッフは10名で内3名がヘルプデスク対応要員
 ○ヘルプデスクへのアクセス状況は、一日・一名あたり電話またはe-mail合わせて
  40件程度
 ○ヘルプデスクの受け付けは、化学物質管理、自動車、電気電子の3分野
 ○REACHタスクフォースの主要業務は、以下の通り。
  ・REACHに対応するための体制整備
  ・関係者間の調整
  ・関連人材育成(実務者セミナー、これまでに15回開催)
  ・情報収集(国内状況、国際動向)・発信
  ・ガイダンス、注意喚起
  ・カタログ、REACH登録マニュアル作成
  ・e-learningプログラム提供
  ・ラジオキャンペーン(REACH対応1分間CM(10PM)、1回/day×1か月)
  ・企業訪問サービス
  ・GLPラボの増強
 ○訪問サービスは、地域および中小企業を対象に訓練を実施し、質問等に答える
  プログラム
 ○実務者向けセミナーは専門家向けと一般向けに分けて効率的に実施
 ○企業訪問サービスの実施体制は、外部委託
 ○GLPラボ増強は、OECDの基準に厳密に対応するためのもので、新規設置及びアップ
  グレードの計2か所
 ○産業資源部のREACHビジネスサービスセンターとの違いは、環境部のREACHタスク
  フォースおよびヘルプデスクは環境・自然・健康保護を目的としており、産業
  資源部は産業界の支援と貿易振興を目的としている。両者のつながりはそれほど
  多くはないが、関連会議やセミナー等の共催などをとおしてコミュニケーション
  を促進している。
 ○環境部REACHタスクフォースのメンバーは、環境部、国立環境研究院(NIER)、
  韓国環境資源公社(ENVICO)、韓国化学物質管理協会(KCMA)から構成され、
  NIERは試験データやリスク評価を担当、ENVICOはGLP対応、KCMA(最近加入)は
  HPV対応を実施
 ○REACH登録に関し鍵を握るORに関しては、ローカルベース及び欧州ベースともに
  リスト化し、インタネットで一般に公開
 ○産業界へのガイダンスとして主なものは、製品中の化学物質の把握とREACH対応
  分類の実施を最優先事項として提示、ORリストを参考に予備登録の実施を推奨
 ○GHSおよびRoHSに関しては、化学物質管理セミナーの中で対応


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[2]海外化学物質管理事情(その5)       「化学物質/物質とは」
                      [化学品安全管理研究所 大島 輝夫]

【化学物質】と言う言葉は、しばしば用いられるが、その内容の理解は必ずしも一致
していない。一般に、用語の意味内容は、多くの市民のイメージ、辞書、学術用語、
日本の法令による定義、法令で定義されずに用いられているもの、対応する海外の
法令による定義、条約などの国際的文書などによるものなどで、各種様々である。
そこで、今回は「化学物質」およびそれに類似する用語の内外の定義や、使用の現状
を明らかにし、同時に日本の多くの市民の理解および「化学物質審査規制法」の定義
とは異なる国際的な"化学物質(天然物も含む)"という用語の用いられ方を説明し、
市民を含む関係者の理解を深める参考としたい。

1.化学物質
1)多くの市民の理解
合成化学物質のイメージがあり、天然物と対比していることが多いようである。また
ダイオキシンのような非意図的生成物(焼却場等などからの意図しない副生成物)も
化学物質に含めている。これらの場合、市民は化学物質について、必ずしもよい
イメージを持っているとはいえない場合も見受けられる。さらに、ある自治体の化学
物質の理解を深めるためのパンフレットにも、「化学物質はどこでうまれてどこに行
くの?」の説明として、「化学物質は工場などで造られ」と記載されている例もある。

2)辞書
2008年1月に出版された岩波書店の『広辞苑』第6版(新村 出編)には、「化学
物質」は『物質のうち、特に化学の研究対象となるような物質を区別していう語。
化学工業で合成される物質、あるいは人工の物質という意味で使われることがある
が、本来はそのような意味はない。』とある。
東京化学同人発行(1989年10月)の『化学大辞典』(大木道則他編)には、「化学
物質、chemical substance、chemicals」として、『すべての生物・非生物を構成
する物質は原子であるが、大部分の物質では原子が結合して分子となり、または、
さらに分子の集合体や高分子重合体を形成している。これらを独立の、かつ純粋な
物質として化学物質とよぶ。』とある。
上記の国語辞典および学術辞典は、いずれも「化学物質」に天然物も含めている。

3)学術用語
日本化学会発行(平成16年2月)の『文部科学省 学術用語集 化学編』(増訂2版
13刷)には、「化学物質」・「物質」は記載されていない。「chemical substance」
および「substance」はないが、「chemicals」は、「化学製品」としている。

4)日本の法令の定義
4−1)「化学物質審査規制法」(以下、「化審法」と略記する。)
化審法は、PCBによる環境汚染が大きな社会問題となった昭和48年(1973年)当時に、
PCB のみではなく化学物質全般の安全性の問題としてとらえ、未然防止、予防的
観点に立ち、PCB 同様な性質を有する POPs(残留性有機汚染物質)の規制、および
新規化学物質の事前審査制度を、世界で初めて導入した法律であった。化審法は、
このような経緯(一般環境経由での化学物質汚染を防止)もあり、同法で扱う
「化学物質」の定義として、『元素又は化合物に化学反応を起こさせることにより
得られる化合物(放射性物質及び次に掲げる物を除く)をいう。』(第2条)と定義
し、現在も天然物そのものは除いている。

4−2)「労働安全衛生法」(以下、「安衛法」と略記する。)
安衛法では、化学物質は、『元素及び化合物をいう』(第2条)と定義されている。

4−3)「化学物質管理促進法」(以下、「化管法」と略記する。)
化管法では、化学物質は、『元素及び化合物(それぞれ放射性物質を除く)を
いう』(第2条)とされている。

このように、安衛法および化管法の2法は、法で扱う化学物質の定義に天然物を含め
ている。

5)その他の日本の法令における「化学物質」の使用
特に定義をしないで、「化学物質」の用語が用いられている法律は、法令データ提供
システム(http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxsearch.cgi)を用いて検索すると、
計12存在する。その中には、「環境省設置法」のような法律も含まれているが、
「ダイオキシン類対策特別措置法」 (第6条)、「化学兵器の禁止及び特定物質の規
制等に関する法律」(第29条、有機化学物質の製造)などにも用いられている。また
「労働基準法施行規則」(別表、第一の二の四、(第35条関係))のように、法律では特
に定義されていないが、規則で、「化学物質等による次に掲げる疾病」として"等"と
いう言葉は用いられているが、「7 空気中の酸素濃度の低い場所における業務によ
る呼吸器疾患」などの例もあり、安衛法の下にある「特定化学物質等障害予防規則」
などを含めると、多数の規則・省令などで、「化学物質」の用語が使用されている。

6)国外の化学物質管理法における"化学物質"の定義、用語
日本の化審法制定以後、化学物質に関する法令が国外各国で制定されており、様々な
定義や用語が用いられているが、それらのほとんどは天然物も含めている。

6−1)Chemical Substance
○米国 TSCA (有害物質規制法、1976年)
第3条に、『特定の分子的アイデンティティのある有機または無機物質を意味し、
以下を含む。』とある。
(a)全体的にせよ、部分的にせよ、化学反応の結果として生じる、または自然に生
   じる、そのような物質のなんらかの組み合わせ、および、
(b)なんらかの元素、または遊離ラジカル
この用語には、何らかの混合物(mixture)、何らかのarticle(製品)他を含まない。

6−2)Chemical
○米国OSHA(労働安全衛生局)の危険有害性周知基準(HCS)1910・1200(c)
(1983年)に、『なんらかの元素、化合物、または元素、および/または化合物
の混合物をいう。』と定義している。
○オーストラリア工業化学物質法(1989年 第6条)
この法律の対象とする「工業化学物質」の定義は、第7条にある『工業用途を持つ
化学物質』を意味し、以下を含む。
(a)混合物に含まれている化学元素も含めた、化学元素、または、
(b)混合物に含まれているようなものも含めた、化学元素の化合物、または錯体、
   または、
(c)UVCB 物質(組成が不明または不定である化学物質など)、または、
(d)天然に生ずる化学物質
 ただし、次のものは含まない。
(e)article (製品)、
(f)放射性化学物質、
(g)混合物

6−3)Substance(物質)
○EU REACH(2006年)
第3条に、『化学元素、および自然の状態において、または、何らかの製造プロセス
により得られたそれらの化合物を意味し、その物質の安定性を保持するのに必要なあ
らゆる添加物、および用いられたプロセスから生じたあらゆる不純物を含むが、その
物質の安定性に影響することなく、またはその組成を変えることなく分離され得るあ
らゆる溶剤は除外する。』
○カナダ環境保護法(1999年)
第3条に、下記を含む生物か、非生物かを問わず、何らかの区別可能な種類の有機、
または無機物を言い、次を含む。
(a)元素、フリーラジカル、天然に存在するまたは化学反応の結果として特有の
   分子的同一性の元素を組み合わせ
(b)排水、排気、廃棄物に含まれる生物物体、または異なる分子の複雑な混合物
   (以下省略)

6−4)Substances(物質と訳している)(関係箇所だけを抜粋)
○EUのREACH以前の第6次修正指令(指令79/831/EEC)(1979年)、
 第7次修正指令(指令指令92/32/EEC)(1992年)、既存物質の評価と管理に
 関する理事会規則(1993年)
何れも substancesの語を用いている。定義は、第7次修正指令は、『化学元素、
および自然状態または製造工程で得られるそれらの化合物をいい、製品の安定性を
保持するのに必要な安定剤および使用する工程から由来する不純物を含むが、物質の
安定性あるいはその組成の変化を伴わない分離可能な溶剤を除く。』
上記のREACHのsubstanceの定義と概略は同じ。
第6次修正指令の定義はやや簡単である。

6−5)化学物質 
○韓国有害化学物質管理法(1990年)
第2条に、『元素・化合物、および、それらに人為的な反応を起こして得られた物質
と、自然状態で存在する物質を抽出または精製したもの』をいうとされている。

7)国際条約、国際文書の定義
7−1)ILO 条約(1990年)
第2条の定義において、「chemicals」を『元素、化合物、及びそれらの混合物
(天然であるか、合成であるかを問わない)。』としている。

7−2)GHS
特に定義はしていないが、表題に chemicals を用いており、「化学品」と訳して
いる。 Substances も用いることがあり(1.1.2.1(a))、化学物質と訳している。
また、1.1.1.6(b)に、『危険有害性の分類は、原則として、天然、人工の別を問わず
化学元素、化合物およびその混合物に固有な性質に由来する危険有害性について
行う。』とあり、天然物も含めている。

7−3)国連 Agenda21/SAICM
Chemicals を用いている。

7−4)OECD
Chemicals を用いている。

以上のように、内外の法令、条約などは、化学物質、chemicals、chemical
substance など色々な呼称が用いられているが、化審法は別として、いずれも天然物
を含めている。 



2.化学物質の範囲
日本では、多くの市民が、【化学物質】は合成物質であり、天然物と対比する
イメージがあるが、これまで説明してきたように、化学物質、およびそれに相当する
用語は、天然物も含んでいる。一方で、法令上では、「化学物質」の定義が個別に
される場合もあり、より限定的に使われることもある点には留意する必要もある。
このことを、日本でも、多くの市民に理解して貰うことが望まれる。

【参考】
化学物質に関連する国外の関連法令等の日本語訳については、(社)日本化学物質安全・
情報センターの発行資料を参考にした。



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[3]メールマガジン第4号への質問回答   [化学品安全管理研究所 大島 輝夫]

海外化学物質管理事情(その4)でお届けした「韓国などの GHS 対応」について、
本メールマガジン読者の方から、韓国におけるGHS制度導入に関する経過措置について
ご質問をいただきましたので、その質問内容に関する回答を共有します。
                           [ネットワーク事務局]

Q【韓国のGHS対応に関して質問させてください。】
1月17日配信のメールマガジンを拝見したのですが、「産業安全保健法」の経過措置
は、2008年6月30日までとありました。もうひとつの「有害化学物質管理法」では
混合物の表示について2013年6月まで猶予期間があるようです。こうなると、「産業
安全保健法」該当物質の表示は2008年7月1日から切り替える必要があるが、「有害
化学物質管理法」該当物質の表示は、2013年7月1日からでよい、ということなので
しょうか。

A【経過措置について】
韓国の労働部が所管する産業安全保健法と環境部が所管する有害化学物質管理法の
GHSへの対応はかなり相違がある。
産業安全保健法は、指定されている化学物質のみに限定せず、分類基準に該当する
危険有害性情報がある場合は、分類、表示、MSDSを作成することを義務付けている。
有害化学物質管理法で「有毒化学物質」に指定された根拠は不明であるが、通常は
産業安全保健法の危険有害性の分類基準に該当すると考えられる。したがって、安全
サイドに立てば、2008年6月30日までに、有害化学物質管理法の「有毒物」について
も、産業安全保健法の危険有害性分類基準に従い、分類、表示、MSDSの提供をする
ことが望ましいと思われる。
しかし、産業安全保健法施行規則第92条の第4項(警告表示)には、「有害化学物質
管理法第29条の有毒物に関する表示に該当する場合には、産業安全保健法の警告表示
をしなくてもよい。」とあるので、有害化学物質管理法の警告表示の規定が優先し、
法律上の規制としては、「有毒物」について、上記の現行の単一物質、または混合物
の表示の経過措置が認められると考えられる。また、例えば有害化学物質管理法、
産業安全保健法に基づいて、新規化学物質の届け出を行い、表示を義務付けられて
いる場合などで、「有毒化学物質」の対象にも含まれない場合には、2008年7月1日
以降は、産業安全保健法の分類基準に従い、分類、表示、MSDSの作成が義務となると
思われる。
メールマガジン第5号で記したように、韓国では労働部、環境部はそれぞれ個別に
化学物質の分類作業を行っている。この環境部の分類結果が最終的に公示された場合
には「有毒物」の表示などが規制されるが、これを最低要求としてとらえた対応を
検討すべきと考える。
産業安全保健法のGHSに基づく表示とMSDSの経過措置は、本年6月30日まで
である。なお、労働部は「化学物質の分類・表示および物質安全保健資料に関する
基準」を2008年1月14日に改正し、GHSの改訂に対応して「吸引性呼吸器有害性」を
加えるなどを公示した。有害化学物質管理法の550の"有毒物"の表示は、環境部が
公示する分類に従うことが義務であるが、まだ公示されていない。しかし2008年
7月1日の施行までには公示されると思われる。ただし、その猶予期間は、単一物質に
ついては2011年6月30日まで、混合物については2013年6月30日までである。


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[4]あとがき                     [ネットワーク事務局]

砂嵐が来たかと思わんばかりの春一番が過ぎ去り、かすかな瑞香やほのかな梅の香に
誘われるかのように、冬空に向かって立っていた公園の立ち木が、わずかながらに
萌黄色や薄紅色を纏うようになってきています。
皆様におかれましてはいかがお過ごしでしょうか。

先日、韓国の産業資源部が中心になって開催したREACHの登録エキスポを調査に
行きましたが、国民性なのかあるいは対策に向けた取り組み自体が盛んなのか分かり
ませんが、会場全体がエネルギッシュな雰囲気につつまれており、詳細は分かりませ
んがREACH対応における違いを体感しました。この違いには、その国が持つ産業
構造や企業形態なども少なからず影響を及ぼしていると考えます。また、政府の産業
界支援方針も、ORの活用と予備登録の推奨を前面に出しており、エキスポへの出展
企業のニーズに合致した点も、今回のエキスポを盛り上げた一因だと考えています。
翻って、日本ではいろいろな産業セクターのサプライチェーンにおける関係者の
REACH対応には、まだ対応が必要な部分が残されている面があるように思えます。
2月13日付の環境新聞では、川中企業を対象にしたREACHの対応と今後の課題に
向けたアンケート結果が公表されていますが、川下からのREACH対応要求は、
「来ていない」が59%もあることが示されています。サプライチェーンにおける全て
の関係者がREACH対応をしなければならないわけではありませんが、REACH
対応を含む化学物質管理の改善に向けた幅広いボトムアップと同時に、各サプライ
チェーンにおける情報の流れやコミュニケーションの促進を同時に展開する必要が
あると認識しています。化学物質国際対応ネットワーク事務局では、上記のニーズの
一端をカバーするものとして、日本に適した化学物質管理対応をAll Japanで推進する
ことをモットーに、今後も率先的な活動に精進して行きたいと考えていますので皆様
のご協力をよろしくお願い申し上げます。


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