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メールマガジン

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        化学物質国際対応ネットワークマガジン 第12号
           http://www.chemical-net.info/
               2008/10/20 配信
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このメールマガジンは、化学物質国際対応ネットワークのウェブサイトから
配信登録をされた方を対象にお送りしています。

第12号は、以下の内容をお送りいたします。

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☆ [1]ネットワーク幹事会の開催について   学物質国際対応ネットワーク事務局
☆ [2]第3回EU・インド環境フォーラムについて
                      環境省化学物質審査室長 戸田英作
☆ [3]海外化学物質管理事情           化学品安全管理研究所 大島輝夫
☆ [4]中国の環境関連動向          化学物質国際対応ネットワーク事務局
☆ [5]第3回化学物質国際対応ネットワークセミナーの開催について 
                     化学物質国際対応ネットワーク事務局
☆ [6]あとがき               化学物質国際対応ネットワーク事務局
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[1]ネットワーク幹事会の開催について  [化学物質国際対応ネットワーク事務局]

 2008年9月29日に第3回化学物質国際対応ネットワーク幹事会を開催し、以前参加
団体の皆様にご協力いただいたインタビュー結果及びアンケート結果等も踏まえ、
今後の活動方針を検討しました。そこで承認された主な活動方針・活動内容は以下の
通りです。

(1)ネットワーク活動を通した情報収集方法
1)活動基本方針
  欧州だけではなくアジアの動向も意識した現地の化学物質関連情報を、現地調査
  や関連会議参加などの様々な手段を駆使して的確に収集する。
2)活動内容(予定)
  ○GtoGベースでの情報収集を継続(EC、ECHA、関係国、日中韓他)
  ○欧州産業界等の関連公開情報収集
  ○非EU関連団体・機関との情報交換(中韓関連団体・機関)
  ○欧州現地調査(ECHA's First Stakeholders' Day他)(実施済)
  ○中国現地調査(今後、調査スコープは要検討)
  ○中国公開情報収集の継続

(2)ネットワーク関係者(参加団体・メルマガ読者)等への情報提供方法
1)活動基本方針
  既存の有料情報提供サービスとは一線を画し、関係省庁と民間が相乗りした
  ネットワークの優位性を最大限に活用した公益性の高いかつ中小企業等にも役立
  つ有益な基本化学物質関連情報等のネットワーク活動(セミナー、BBS、メール
  マガジン)を通した提供
2)活動内容(予定)
  ○ニーズを踏まえたセミナーの企画・実施
  ○メールマガジンの発行継続
  ○国内外関係機関とのリンク処理
  ○ネットワークの優位性を活かした現地情報の提供

(3)ネットワーク提供情報の内容向上
1)活動基本方針
  参加団体を対象とするアンケート調査に基づくニーズや課題に的確に対応しつつ
  現地調査や国内外の関連機関・団体との情報交換及び連携を通じて得られた付加
  価値の高い情報を発信する。
2)活動内容(予定)
  ○化学物質関連法制度の基本的な説明・解釈の提供
  ○現地調査(欧州、中国)を最大限に活用した関連情報提供能力強化
  ○日中韓の地域連携枠組みを活用した中国等化学物質関連法制度の情報強化
  ○CSR作成及びリスク評価手法に関するセミナーの企画
  ○GHSに関する日中韓の実務担当者とのワークショップ企画
  ○アジア地域の化学物質関連法制度比較(ベトナム及びタイ他)

 今後も参加団体の皆様のニーズを取り入れながら、ネットワーク活動を発展させて
いきたいと考えています。引き続き皆様の積極的なご参加を期待しております。

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[2]第3回EU・インド環境フォーラムについて  
                     [環境省化学物質審査室長 戸田英作]

 9月16日にムンバイで開催された第3回EU・インド環境フォーラム(在印欧州委員
会代表部及びインド環境森林省主催)に出席しましたので、その状況について報告し
ます。
1.背景及び経緯
 EU・インド環境フォーラムは、2005年に開始。第1回・第2回(2006年)は、廃棄物
問題を主たるテーマとした。今回は、関心の高まっているREACHを取り上げ、日中韓
からもスピーカーを招いた。

2.フォーラムの概要
(1)欧州委員会
 欧州委員会環境総局国際課ブランコ課長、環境総局化学物質部ファン・デル・
ザント氏、在印代表部ドンカーズ参事官より、REACHの背景、化学物質登録の状況、
リスク評価の手法等についてプレゼン。
 概ね一般的な説明であったが、今後の見込みについて以下のような説明があった。
・ 認可対象物質のリストについては、先頃パブリックコメントが行われた16物質
  以外に、欧州委もECHAにドシエ作成を依頼すべく準備中であるが、リストの公表
  は来年になるだろう。
・ 除外物質(附属書IV及びV)の改正案は10月には欧州議会を通ると思う。新たに
  登録対象となっても、12月1日の予備登録期限は変更するつもりはない。
(2)インド環境森林省
 環境森林省カワジャ副大臣、パンディ顧問より、インドにおける化学物質管理政策
についてプレゼン。
 インドでは、環境保護法により、化学事故や分類表示への対応がなされている。
現在、化学物質のナショナル・インベントリーを作成中。新規化学物質の審査規制
制度を導入する予定は今のところない。

(3)経済協力開発機構(OECD)
 OECD環境保健安全課ミュセ氏より、データの相互受け入れ、IUCLID5データベース
QSAR(構造活性相関)ツールボックス等についてプレゼン。
 データの相互受け入れについては、OECDメンバー国のほか、スロベニア、
イスラエル及び南アフリカが正式参加しているが、インドも暫定的に参加しており、
近く正式参加が見込まれるとのこと。

(4)欧州化学工業協会(CEFIC)
 CEFIC・REACH化学物質政策マネージャー ヘーゼン氏より、REACHのインド産業界
への影響についてプレゼン。唯一代理人(OR)の選任等、実務的な事項について説明
があった。

(5)インド化学工業会
 インド化学工業会ショー氏及びインド基礎化学品・医薬品・化粧品輸出振興会
サマント氏より、インドにおけるREACHへの対応についてプレゼン。
 基礎化学品・医薬品・化粧品輸出振興会は、ヘルシンキにオフィスを開設し、
ORとして1800物質の予備登録を行ったとのこと。

(6)インドNGO
 TOXLINKのシンハ氏より、インドにおける化学物質対策の課題についてプレゼン。

(7)中国五鉱化工進出口商会
 中国五鉱化工進出口商会 劉斌氏より、同商会のヘルシンキオフィスの活動につい
てプレゼン。
 同オフィスは、ヘルシンキのREACHセンターに入居しており、自らOR業務を行う他
様々な情報収集・調整に当たっている。REACHセンターには、エジプト、トルコ、
インド等の関係者も集まっており、今後、非EU企業のREACH対応について、
情報交換・協力を強化したいとのこと。

(8)日本環境省
 環境省化学物質審査室戸田室長より、我が国におけるREACHへの対応及び化学物質
管理政策の動向についてプレゼン。

(9)韓国在欧環境委員会
 韓国在欧環境委員会パク・デユン氏より、韓国におけるREACH対応について
プレゼン。
 同委員会では、韓国の化学企業のうち、REACHに直接関連すると考えられる約300社
に、予備登録やSIEFへの対応等についてアンケートを行ったとのこと。ただし、その
結果は示されなかった。

(10)質疑応答及び結論
 REACHにおける登録、リスク評価等について、インド企業等からの質問が相次い
だが、総じて初歩的な質問(ポリマー中の新規モノマーの登録の必要性など)が
多かった。結論として、リスク評価、インベントリー作成、データの相互受け入れ
分類表示等のテーマで、専門家の交流等、EU・インド間の協力を進めていくとの
方向性が示された。

(11)その他
 今回用いられたプレゼン資料は、当日配布されなかったが、発表者の許諾を得て、
在印欧州委員会代表部及びインド環境森林省のウェブサイトで公開されている。
http://www.delind.ec.europa.eu/en/presentationsofreach.htm
www.envfor.nic.in

3.所感
 EU・インド間のフォーラムに日中韓の専門家を招くことは、これまでのREACH関係
の行事には見られなかった手法であるが、非EU国間の情報交換を図る上でも、極めて
有益であった。インドにおける化学物質管理政策については、分類表示や
インベントリー作成等の動きをフォローしていく必要がある。


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[3] 海外化学物質管理事情 (その9) 「化学物質のリスクアセスメント/リス
クマネージメント/リスクコミュニケーションの意味について 」
                         [化学品安全管理研究所 大島 輝夫]

 化学物質国際対応ネットワークメールマガジン第11号でお届けした、「化学物質
管理におけるリスクとは」の続きとして、今回は、「リスク評価/リスク管理」に
ついて説明をいただきました。           [化学物質国際対応ネットワーク事務局]

1.化学物質の リスクアセスメント(リスク評価)/リスクマネージメント
(リスク管理)/リスクコミュニケーション の意味
(1) 米国連邦政府におけるリスクアセスメント : プロセスの管理
1) 公衆衛生のリスクアセスメントのための制度上の方策に関する委員会
(NAS-NRC)1983年3月  [1][2]
 NAS(米国国立科学アカデミー)-NRC(米国研究評議会) の報告書で、米国議会
からの指令に対応して、食品医薬品局(FDA)が NAS と契約し、リスクアセスメント
のための制度上の方策について研究報告を行ったものである。この報告書は、それま
で必ずしも明確に分離して考えられていなかった、リスクアセスメントと、リスク
マネージメントの役割を明確に分離して各々の意義を明らかにし、さらに化学物質の
健康影響、特に長期毒性のリスクアセスメントのプロセスを明らかにした。これは
今日でも変わらずに用いられている基本を示したこの分野の古典的報告書である。
この報告書は、リスクアセスメントとは、環境中のハザードに人がばく露することに
よる潜在的健康悪影響の総合判定を意味するものであって、今日基本的な考えと
なっている"リスク=ハザード×ばく露"を提示し、ハザードがいかに大きくても
ばく露がゼロであれば、リスクはゼロである、という基本的な考え方を示した。
また、リスクマネージメントは、リスクに関連した情報を含む政治的、社会的、
経済的、および技術的情報を考察して選択肢を作成、解析、比較し、ハザードに対す
る適切な措置を選定する意思決定プロセスとされている。
これより、リスクアセスメントと、リスクマネージメントが明確に分離され、リスク
マネージメントは、リスクアセスメントの結果を十分に理解して、それに加えて色々
な因子を考慮して政策、規制、管理方法などを決定するものであることを明確にした。
したがって、必ずしもリスクアセスメントの結果にそのまま従わない政策、規制、
管理方法等の決定もありうる。

2) NRC 報告書の用語解説
【リスク評価(risk assessment)】 ハザードへのばく露から生ずる恐れのある
 有害影響について、総合判定(characterization)すること。リスクの見積もり
 (estimate)および、測定、分析技術、解析モデル、に見られる不確実性の評価を
 含む。
【定量的リスク評価(quantitative risk assessment)】 リスクを数値、または
 量で表現する(numerical representation)ことを特徴とする。
【リスク管理(risk management)】 代替リスク制御方策の評価、それらの間の
 選択(何もしないことをも含む)、および実行。責任をもつ個人、または職員
 (リスクマネジャー)は、しばしばリスク評価、リスク制御評価、リスク
 メッセージの作成の監督を行う。
【リスクコミュニケーション(risk communication)】 個人、集団、組織間での
 情報および意見の相互交換のプロセス。リスクの特性に関する種々のメッセージ
 や、関心、見解の表明、またはリスクメッセージや、リスク管理のための法的
 および制度的な取り決めへの反応などを含む。
【リスクメッセージ(risk message)】 リスクについての情報を含む記述。口述
 または視覚による叙述。リスク低減のための行動についての助言を含む場合と含ま
 ない場合がある。公式のリスクメッセージは、リスクについての情報を提供する
 明確な目的で組織だって記述された、あるいは視聴覚用にまとめられたものである。

 なおIPCS(International Programme on Chemical Safety,国連のUNEP,ILO,WHOの
 共同事業)は,IPCS Risk Assessment Terminology (2004)を発行し、リスクアセス
 メントに用いられる基本的用語の定義、解説を行っているが、risk  assessment,
  risk management については、上記のNRCの定義をほぼ踏襲している。 

  {筆者注1}危機管理(crisis management)は、事故が起こった時の発生直後の
  緊急対応で、事前に予想することが困難な場合もあり、この場合事前対応である
  リスクマネージメントとは区別される。しかし予想される場合も多く、リスク
  マネージメントに含める人もいる。
  {筆者注2}リスクコミュニケーションは、かつては規制などの説明、説得など情報
  の一方通行と理解されていた。しかし、現在では、情報の共有、相互交換に意義が
  あるとされている。そして利害関係者は、平常から信頼関係を築くことが重要で
  ある。単に事業場の周辺住民のみを対象とするのではなく、広く市民社会を対象と
  して、化学物質のリスクの意味の理解を深めることが望ましいと筆者は考えてい
  る。
 {筆者注3} ラベル、MSDS は、通常リスクメッセージとされているが、これは
  ハザードメッセージである。

(2) 環境省のホームページのリスクコミュニケーション [3]
 環境省のホームページにおいて、リスクコミュニケーションとは、「環境リスク
などの化学物質に関する情報を、市民、産業、行政、等の全てのものが共有し、意見
交換などを通じて意思疎通と相互理解を図ることをいいます。化学物質による環境
リスクを減らす取り組みを進めるための基礎となるものです。」とされている。
また、同じく環境省のホームページに、『化学物質のリスク管理に向けたリスク
コミュニケーションに関する OECD ガイダンス文書
ENV/JM/MONO (2002)18, 25 July 2002』の日本語訳(68頁)が掲載されている。

2.リスクアセスメント/リスクマネージメント/リスクコミュニケーションの
相互関係
 従来は、リスクアセスメントとリスクマネージメントとの相互関係は、互いに接点
を共有する二つの円の図で示されていたが、その後、二つの円は、円の一部が交わり
あうような表現とされるようになったこともあった。リスクアセスメントとリスク
マネージメントとの関係は、リスクアセスメントは対象の選定など、リスク
マネージメントは、リスクアセスメントの結果のみでなく、その各プロセスの過程、
不確実性などの理解など、相互の情報の共有が必要である。また、リスク
コミュニケーションは、リスクマネージメントのみでなく、リスクアセスメントに
おいてもテーマの優先順位の選択、あるいは報告書の案に対するパブリックコメント
として必要であり、三者は三位一体であると考えられる。 [4]

3.リスクアセスメントのプロセス
 前述の、NRC−NASの1983年の報告書には、リスクアセスメントを4段階で行う基本
手順が示されている。人の健康のリスクアセスメントは、現在もこの4段階で行われ
ている。環境リスクアセスメントはこれと近似の方法で行われるが、ばく露の判定と
環境影響の判定により、リスクの判定を行うことは同じである。 [5]

(1) ハザードの特定(hazard identification)
 ある作用因子に対するばく露が、ある健康状態(がん、出生異常など)の発生率の
 増加の原因となりうるかどうかを決定するプロセスとして、ここでは定義される。

(2) 用量-反応アセスメント(dose-response assessment)
 投与された、または受容された作用因子の用量と、ばく露集団の健康悪影響との
 関係の特性を明らかにし、その作用因子への人のばく露の関数として、当該影響の
 程度を推定するプロセスである。

(3) ばく露アセスメント(exposure assessment)
 環境中に現に存在する作用因子への人のばく露の強度、頻度、期間を測定、もし
 くは推定するプロセス、または新規化学物質の環境への放出によって引き起こ
 されるおそれのある仮想的ばく露を推定するプロセス。

(4) リスクの判定(risk characterization)
 ばく露アセスメントで表される種々の人のばく露条件下での健康影響の発生率を
 推定するプロセスで、ばく露アセスメントと用量-反応アセスメントを組み合わせ
 て行われる。この段階では、前段階での不確かさの要約した影響が記述される。

 {筆者注}人の健康に対するリスクアセスメントについて、国連のUNEP(国連環境計
  画)ILO(国際労働機関)、WHO(世界保健機関)の共同機関である、IPCS(国際
  化学 物質安全性計画)が発行している環境保健クライテリア(EHC)のNo.210
 (1999)「化学物質の健康リスク評価」が参考になる。これは日本語訳も発行され
  ているが、健康リスクアセスメントについて、上記の四段階を解説している。
   動物試験については、「殆どの物質について適切な疫学データが不足しているた
  め、リスクアセスメントのための有害性の特定では、動物を用いた毒性試験が
   重要な役割を果たしている。」と書いている。 [6][7]

4.環境リスク管理の手法
 『米国大統領/議会諮問委員会編「環境リスク管理の新たな手法(1997)』[8][9]
は、環境リスク管理の枠組みについて示唆の多い内容を示している。具体的には、
「リスク管理は、人間の健康や生態系へのリスクを減らすために、必要な措置を
確認し、評価し、選択し、実施に移すプロセスである。リスク管理の目標は、社会、
文化、倫理,政治、法律について考慮しながらリスクを減少し、未然に防止するため
の科学的に妥当で費用対効果の優れた一連の行動を実施することである。」等の記述
があり、リスク管理の枠組みとして、1)問題の明確化・関係付け、2)リスク分析
3)選択肢、4)意思決定、5)実施、6)評価 を繰り返して実施し、その実施に
あたっては、最初の段階から利害関係者が関与することとなっている。

5.労働安全衛生におけるリスクアセスメントの定義
 化学物質のリスクアセスメントの定義は、通常リスクの軽減措置を含まないが、
労働安全衛生の分野ではそれを含んで定義されている。厚生労働省の「化学物質等に
よる危険性又は有害性等の調査等に関する指針について」基発第0330004号平成18年
3月30日によれば、「危険性又は有害性の調査」はILOなどにおいて「リスク
アセスメント」などの用語で表現されているものであることとしている。〔10〕
 リスクアセスメントの実施(運用)の手順は、1)危険性または有害性の特定、
2)危険性または有害性ごとのリスクの見積もり、3)リスクの優先度の設定、
4)リスクの除去・低減措置の検討と実施 とされている。これは通常の化学物質の
リスクアセスメントの定義と異なってはいるが、これはECの
「Guidance on risk assessment at work」1996[11]などに基づいているのであ
ろう。 ハザードは、「危険性又は有害性」の用語を用いている。

6.ISO/JIS 規格のリスクアセスメント、リスクマネージメントの定義
 ISOはGUIDE 51 Safety aspects-Guidelines for their inclusion in standardsを
1999年に発行し、これが日本のリスクに関するJIS規格にも引用されている。
しかし、リスク分析(Risk Analysis)が、NRC/IPCSのRisk Assessmentにほぼ該当し
ISOのRisk Assessment の定義は、リスク評価(リスク分析に基づき、許容可能な
リスクが達成されたかどうかを判断することを含んでいる。これがJIS 規格にも適用
されているので、その相違を理解することが必要である。 

7.まとめ
【化学物質のリスクアセスメント】
 化学物質に対するばく露による健康、環境への悪影響の可能性について記述し、
 評価するために用いられる組織化されたプロセス。健康影響は、ハザードの特定、
 用量 ― 反応アセスメント、ばく露アセスメント、リスクの判定の四段階で行われ
 る。化学物質の健康影響、環境影響のいずれも、ハザードとばく露の二つの因子
 から構成される。
【リスクマネージメント】
 リスクアセスメントの内容を十分理解した上で、社会、文化、倫理、政治、法律、
 などの各々について考慮して、リスクを減らし、未然に防止するための、科学的に
 妥当で費用対効果の優れた行動を実施することである。実施にあたり当初から利害
 関係者の関与が必要である。
【リスクコミュニケーション】
 利害関係者と情報を共有し、双方向的交換であり、平常から相互の信頼関係を築く
 ことが重要である。

 リスクアセスメント、リスクマネージメント、リスクコミュニケーションは、本来
三位一体となるべきである。 

【参考文献】
[1]Risk Assessment in the Federal Government : Managing the Process   
   National Research Council, National Academy Press 1983
[2]同上の訳 連邦政府におけるリスクアセスメント : プロセスの管理 NAS-NRC
   社団法人 日本化学物質安全・情報センター訳 昭和61年6月
[3]環境省ホームページ 化学物質などの環境リスクについて学び、調べ、参加する。
  市民 化学物質に関するリスクコミュニケーション     
[4]例えば、「複数媒体汚染環境安全性点検評価調査」環境庁委託調査 環境科学会
   大島 輝夫 「リスクコミュニケーションの位置づけ」同書 82頁 平成6年3月
[5]Guidelines for Ecological Risk Assessment  EPA/630/R-95/002F 1998年4月
[6]Principles for the Assessment of Risks to Human Health from Exposure to 
   Chemicals  Environmental Health Criteria 210 IPCS-WHO 1999
[7]同上の訳 :化学物質の健康リスク評価 関澤純・花井荘輔・毛利哲夫 共訳
   丸善 平成13年3月
[8]Framework for Environmental Health Risk Management 
   The Presidential/Congressional Commission on Risk Assessment and Risk 
   Management  Final Report  Volume 1 1997
[9]同上の訳 環境リスク管理の新たな手法 リスク評価及びリスク管理に関する
   米国大統領/議会諮問委員会編 佐藤雄也・山崎邦彦訳 化学工業日報社 1998
[10]厚生労働省労働基準局長 通達 「化学物質等による危険性又は有害性等の調査
    等に関する指針について」 基発第0330004号 平成18年3月30日
   「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針」
    厚生労働省リーフレット平成18年3月 
[11]Guidance on risk assessment at work, European Commission 1996
    中央労働災害防止協会 調査研究部の対訳 平成9年9月
[12]IPCS Risk Assessment Terminology, 2004


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[4]中国の環境関連動向        [化学物質国際対応ネットワーク事務局]

1.REACH規則に基づく予備登録に積極的に対応(抜粋)
 REACH規則の登場は、国家品質監督検験検疫総局、商務部などの政府部門の高い
関心を喚起した。国家品質監督検験検疫総局は、2003年からREACH規則の対応に着手
し、技術面で一連の準備を行った。また、REACH規則に対応する化学品安全評価技術
基準体系を構築し、具体的には200項目以上のREACH規則に関連する化学品安全測定
評価基準、30項目以上の化学危険品系列国家基準が含まれている。さらに、中国
化学品安全情報プラットホーム、中国最大の化学品安全データに関するデータベース
を構築した。国家品質監督検験検疫総局はEU企業総局と「中欧工業品安全とWTO/TBT
協商に関する協力メカニズム」の枠組みを活用し、REACH規則作業チームを形成し、
同規則のガイドラインや関連情報共有などの分野で協力体制を構築している。EUは、
中国のREACH規則対応における測定機器、ラボ整備、人材育成および資金面において
協力し、専門家を派遣して中国企業にREACH規則の研修を行った。中国企業のREACH
規則対応を支援するため、国家標準化管理委員会は、専門家を組織して、REACH規則
と関連する一部の国家基準の改定準備を行い、現在、その改定案はすでに完成してい
る。その他、国家品質監督検験検疫総局はREACH規則対応を実施するための指導・協調
チームを設立し、輸出入検験検疫系統においてREACH規則を研究している全ての専門
技術人材を集めて、REACH規則対応専門家チームを組織した。

出典:中国検験検疫REACH解決センター 《中国産業安全指南》 (2008年8月27日)
http://www.reach.gov.cn/Html/Trade/2008/0827/1281.htm


2.REACH規則は化学物質の毒性基準の制定に資する
 現在、中国の化学物質毒性・生態安全性に関する技術基準システムは、国際水準と
大きな格差がある。このため、REACH規則に対応するための技術基準とラボの整備
計画が新たに策定された。
 国家品質監督検験検疫総局は、GHS制度(化学品の分類および表示に関する世界
調和システム)の実行とREACHの対応を推進し化学物質の鑑別と評価を行うため、
広東、上海、天津、遼寧、山東、江蘇、深セン、湖北、寧波の9か所の検験検疫局、
および中国科学院で計10か所の重点実験室を設置することを承認した。同時に、EUと
データの相互認証と共有を実現するため、GLP(優良試験所基準)体系を構築する
よう準備をしている。EU 域内の20数カ国には、すでに700か所以上のGLP実験室が
あり、中国の第1号GLPラボは、2008年6月末に完成する計画であった。

出典:中国化工情報センター(2008年9月3日)
http://www.cheminfo.gov.cn/05/UI/hottopic/page_hottopic.aspx?id=11885
&Tname=RDZZ_WZ&Caption=&blm=Reach 


3.REACH規則が中国のイソシアネート産業に及ぼす影響
 REACH規則の実施が中国のイソシアネート産業に及ぼす影響は次の三つがある。
(1)イソシアネートとその関連製品の輸出に障害をもたらす。
(2)イソシアネート市場の変化を引き起こし、その市場の競争を激化させる。
(3)国内イソシアネート企業の発展に影響をもたらす。

 これらを踏まえ、REACH規則の対応について、次のように提言する。
(i)REACH規則に対する理解を促進し、業界に対して重要性をアピールする。
(ii)イソシアネート企業が、団体を組成して共同でREACH規則の予備登録に対応
   する。
(iii)産業のグレートアップを加速する。

出典:中国化工情報センター (2008年9月8日)
http://www.cheminfo.gov.cn/05/UI/hottopic/page_hottopic.aspx?id=12621
&Tname=RDZZ_WZ&Caption=&blm=REACH 


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[5]第3回化学物質国際対応ネットワークセミナーの開催について
                    [化学物質国際対応ネットワーク事務局]

 第3回化学物質国際対応ネットワークセミナーの参加について、たくさんのご応募
ありがとうございました。臨時号でもお知らせした通り、今回のセミナーでは、
「REACH規則対応に関する国際動向と予備登録後の課題」と題しREACH規則に関して
最近開催された国際会議で得られた国内外の動向に関する情報を紹介するとともに、
予備登録後に必要となる手続きについて確認することをねらいとします。

日 時  2008年 10月27日(月) 14時00分 〜 17時00分
場所  三田共用会議所(東京都港区三田2-1-8)

 先日、参加申込を締め切りましたが、こちらの予想を大きく超えるお申込みがあり
ました。その結果、一般申込の方については、抽選により、一部の方の参加をお断り
することとなってしまったことをお詫び申し上げます。

 セミナー終了後にはネットワーク上にて開催報告をしたいと思いますので、
そちらをご覧ください。


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[6]あとがき             [化学物質国際対応ネットワーク事務局]

 どこからともなく街中に漂よっていた金木犀の香りも姿をけし、一雨ごとに秋が
深まって行く季節ですが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
 今回は、前回に引き続いて、いろいろな面からリスクに関する解説をいただきまし
た。解説にもある通り、「リスクアセスメント」や「リスクマネージメント」は、
これまでにいろいろな分野で定義がなされており、その理解を深めるだけでなく、
法制度等による定義に違いがあるということを認識しながら対応することも重要で
あると感じています。事務局では、基本的な化学物質関連用語の解説を引き続き行う
とともに、欧州や中国、ならびに韓国等の化学物質関連情報を積極的に伝えて行き
たいと考えております。
 また、前号でお知らせしたとおり、化学物質管理のダイナミックな動きを捉える
ため10月10日にヘルシンキにおいて行われたECHAの1st Stakeholders' Dayを取材
いたしました。そこでは、さまざまなREACH理解レベルの関係者が一同に会し、
ECHA職員とhotな対話が交わされていました。この取材結果の概要は、27日開催の
第3回国際対応ネットワークセミナーにて報告させていただきます。
 REACH規則に関する国際対応に関しては、複数のORがグループを形成したり、関係
者により予備登録の期間延長が要求されたりと非常に活発になってきています。
化学物質国際対応ネットワークでもこのようなダイナミックな動きに関し、的確な
情報提供を心がけて参りますので、どうぞよろしくお願いいたします。

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化学物質国際対応ネットワークマガジンをご利用いただきまして、
ありがとうございます。

■本マガジンは、平成20年度環境省請負業務に基づき、社団法人海外環境協力
 センターが運営しております。
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■原則として、毎月1回の配信を予定しています。
 メールの配信については、回線上の問題(メールの遅延、消失)等により
 届かなかった場合の再送は行いませんので、予めご承諾の上、ご利用ください。
 なお、バックナンバーについては、後日ネットワークのホームページに掲載
 する予定です。

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 ご意見・ご感想・ご要望等は、以下のホームページよりご連絡下さい。
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