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               化学物質国際対応ネットワークマガジン 第25号[附録]
                     http://www.chemical-net.info/
                            2010/06/10
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  当附録は、2010年6月10日に配信した化学物質国際対応ネットワークマガジン
第25号における[1]海外化学物質管理事情(その19)で掲載しておりますTSCA改正
法案(化学品安全管理研究所 大島 輝夫)の内容を詳細にお知らせします。

1 TSCA改正の背景
 TSCAは、1976年10月に立法化され、その後附属条項(Annex)の追加に加え
規則の改正がしばしばしば行われた。また、会計検査院(GAO)から複数回に
わたり化学物質のアセスメントと規制に関して、環境保護庁(EPA)の負担を業
界に移すなどTSCAの改正を行うようにとの報告がなされたが、議会はTSCA本体
の改正を行わずに今日に至った。
 以下に改正の必要性が指摘されている事項をあげる。

(1)新規化学物質の届出に対する試験項目が規定されていないこと
 TSCAの第5条は、新規化学物質の届出者に、「健康と環境を害する不当な危険
を加えないことを示すと証明するデータを確立することを義務付ける。」とあ
るが、これはEPA長官に、新規化学物質届出者に特定の試験を行うことを要請
したり、義務付けたりする権限を与えるものではない。

(2)TSCA第6条に基づく既存化学物質の規制
 EPAは既存化学物質の規制を行うに当たり、第6条a項により、「化学物質また
は混合物の製造(中略)使用または廃棄が健康及び環境を損なう不当なリスク
をもたらすと結論する正当な根拠があることを確認」し、さらに第6条c項により、
「リスク対便益の比較、代替物質の利用可能性などの検討」が必要となってい
るが、この第6条の適用で規制されたケースは、数件に止まっている。

(3)裁判によりTSCAのアスベスト禁止の規則が無効と判決
 EPAは、1989年にTSCAに基づく大部分のアスベスト製品を規制する規則を公
布したが、裁判所はEPAの便益の捉え方、及び手続の点も含めて大部分が無効
であると判決を下した。

(4)TSCA公布後に新たに問題となった化学物質のリスクに対する対応が必要
 米国市民の体内に多数の化学物質が存在することが認められ、特に幼児、
子供、妊産婦、老年者などの化学物質に対し脆弱な集団への対応が求められ、
併せてナノ物質などの新たな物質への対応が必要となった。

2 上院及び下院の改正案
(1)上院提出法案
名称:Safe Chemicals Act of 2010, S 3209(条項数:39条)※
(原案)
http://www.govtrack.us/congress/billtext.xpd?bill=s111-3209

(2)下院提出予定法案
名称:Toxic Chemicals Safety Act of 2010(条項数:40条)※
(原案)
http://energycommerce.house.gov/Press_111/20100415/TCSA.Discussion.
Draft.pdf)
(条項毎の説明)
http://energycommerce.house.gov/Press_111/20100415/TCSA.Section.by.
Section.04.15.2010.pdf
(要約)
http://energycommerce.house.gov/Press_111/20100415/TCSA.Summary.
04.15.2010.pdf

※現在のTSCAは、施行日の条項を含め計31条で構成されている。

3 注目すべき改正点※※
[下院の提出予定法案]
第1条 表題
 TSCAから、「Toxic Chemical Safety Act of 2010(以降、改正TCSAとする。)」
に変更されている。

第2条 確認事項、政策、目標
 従来の“意図”という用語が、“目標”に変更され、各項目が整然と列記
されている。
(a)確認事項、
1)化学産業は、米国の経済の重要な部分をなし、多くの産業及びその他商業、
ならびに設備や消費分野で使用される価値ある製品を提供する。
(他7項目)
(b)政策
1)子供、労働者、消費者、公衆の健康を保護し、有害な化学物質のばく露
影響から環境を保護する。
(他7項目)
(c)目標
 化学物質に対し脆弱な集団を含めて、商業的に流通している有害化学物質
のばく露に焦点をあてて、健康と環境を保護することが、米国の目標である。
1)商業上の全ての化学物質が、この条項の安全基準に合致するかどうかを調
査する。
(他2項目)

第3条 定義
 従来のTSCAにおける定義が、修正された項目が列記されている。
TSCA第3条(USC第15章第2602条)第2項で定義されている化学物質(Chemical
substance)に、「article(製品または物品)中に含まれる」、または
「article中で生成する化学物質」を追加する。また、第2項の副項目(B)の
後段に、新規に副項目(c)を加え、「本法の目的のために、EPA長官が、物質の
特性の差異に基づき構造(form)が異なる物質であると決定するならば、
副項目(A)で規定される「特定の分子の同一性」の部分に、ある物質の一つの
構造(form)以上のものを含んでもよいと変更されている。

【筆者注】これにより、Articleに含まれる化学物質は、「化学物質」に対
する規制の対象となる可能性がある。また、同じ分子式であっても、別の
化学物質として取り扱えることとなり、以下の「物質の特性(Substance
characteristic)」の定義とともに、全てのナノ物質なども改正TSCAの対象
となり得る。TSCAの製造業者の定義は、輸入業者も含んでいる。

 同第3項にある環境(Environment)に、周辺(ambient)および屋内(indoor)
が追加された。

 同第9項にある新規化学物質(New chemical substance)に、従来の既存
化学物質名簿にないものを新規化学物質とする定義を廃止し、今回の改正案
中第8条に新設された、製造業者、加工業者が3年毎に提出を義務付けられた
宣誓書が提出されていないもの、または新規化学物質の届出がなされていな
いものと定義された。

[新たに追加された定義]
 第21項として物質の特性(Substance Characteristic)が、化学構造及び
組成、大きさまたはその分布、形状、表面構造、反応性、その他毒性に関連
するかもしれない特性及び性質と定義された。

【筆者注】この定義により、ナノ物質等も改正TCSAの対象となることが明確
となった。これまでは、カーボンナノチューブ及びフラーレンはTSCAの対象
となっていたが、ナノTiO2などは対象外であった。

 第23項として毒性特性(Toxicological property)が、成長、免疫系、内
分泌かく乱、脳または神経系などに影響を与える可能性のあるものを含むと
定義された。
 第24項として影響を受けやすい敏感な集団(Vulnerable population)が、
幼児、子供、青春期、妊産婦、老年者、先天的な原症をもつ者、労働者、
又は長官により指定された集団などと定義された。

第4条 化学物質と混合物の最小データセットと試験(表題と内容が変更。)
 長官は、改正TCSA発効後一年以内に、製造業者及または加工業者に提出を
要求する物質の特性、ハザード、ばく露、用途に関する情報を含む最小デー
タセットを定める。既存化学物質または混合物の製造業者または加工業者は、
同最小データセットを、次のように長官に提出する。
 第6条(a)で定めた優先化学物質については、18カ月後に提出する。(b)その
他については、発効後5年以内に提出する。新規化学物質または同混合物に
ついては、第5条の要件にしたがい提出する。

第5条  製造と加工の届出
 新規化学物質及び混合物ならびに化学物質及び混合物の新規用途の届出の
要求が規定されているが、誰も公表していないその物質または混合物の用途
に対しても届出が必要となった。新規化学物質の製造前段階または既存化学
物質の新規用途について、リスクの有無を決定し、リスクがあると考えられ
る場合には、安全基準(safety standard)を決定する。

第6条 優先順位、安全基準決定、リスク管理(表題と内容の変更)
 この条項は、最初に安全基準の決定を行う300件を下回らない優先化学物質
及び混合物質のリスト制定を長官に要求している。同リストは、改正TCSA
発効後18カ月以内に連邦広報(Federal Register)に公示され、安全基準の
決定がなされた後に削除されるが、同リストの化学物質数が300件以下になら
ないように定期的に補充される。また、この条項は、長官が同リストにある
全ての化学物質の安全基準を決定することを可能にするデータを、製造業者
及び加工業者が提出しなければならないことを規定している。長官は、有害
性から市民の福祉を守る、確実で危害のない合理的な安全基準を適用するこ
とが求められており、製造業者と加工業者はこの基準を守る義務がある。

【筆者注】ACCはこの安全基準の決定に対して、懸念を表明している。

第8条 情報の報告および保存
 商業的に流通している化学物質または混合物の製造業または加工業者に対
して、改正TCSA発効後1年以内に、現在の製造または加工についての宣誓書
を提出することが要求されている。この宣誓書には、化学物質または混合物
の化学的同一性、製造、加工、流通する場所に関するデータ、既存の健康と
安全に関する研究報告のリストに加え、製造量、用途、ばく露、物理的、
化学的、毒性に関する存在する全てのその他情報が含まれ、3年毎または顕著
な新規情報があるときは、直ちに更新される。

第13条  情報の公開
 秘密申請は、いかなる種類の科学的情報が保護されるかを明確にし、規制
当局間で秘密情報を共有することを推進するために、製造業者などによる秘
密扱いを要求する根拠の証明とそれに対するEPAの秘密申請承認が要求され
ている。また、同時に秘密申請を容認し得る基本を明確にする基準を、改正
TCSA発効後1年以内に公表することを長官に要求し、併せて、同基準を製造
業者、加工業者、EPA職員、及び市民に、公表し明確にすることも求められ
ている。全ての秘密申請は、受理後60日以内に、審査され、受理または拒否
が決定される。秘密申請が拒否された場合は、その情報が一般に公開され、
秘密保持の申請が受理された場合は、当該情報の秘密保持期間が5年以内で
認められる。また、この条項は、化学的同一性と安全情報を労働者とその代表
に共有するための基準と、その共有を促進することを長官に要求している。

第15条  罰則
 現行TSCAの第16条副項目(a)で民事上規定される罰金が、$25,000から
$37,500に変更されている。

第17条  優先権 
 TSCA第18条を変更するもので、州または関連行政機関の権利を確保するため
に、この法律と州または関連行政機関の要求の両方に従うことが不可能でない
限り、この法律の要求と異なるまたは追加した要求を付与することが可能に
なっている。

【筆者注】この条項は、州に上乗せを認めるとものとして、産業界などが
懸念を表明している。

第24条 予算配分の承認
 TSCA第29条を変更するもので、会計年度2011から2018年度までの予算配分
要求が長官に認められている。

第33条 リスクが報告されている化学物質に対する行動の促進
 健康と環境に対するリスクを示す文書の根拠に従い、優先化学物質及び
混合物リストに掲載されている化学物質に対し、この条文に基づく行動を促
進することが要求されている。長官は、同リストにある化学物質及び混合物
に対して、改正TCSA発効後1年以内に、安全基準を完成させなければならない。
長官は、リストにある化学物質及び混合物が安全基準を満たすことを確認する
ために、必要ないずれかのリスク管理行動をとり、同リストに掲載された化学
物質の製造業者および加工業者は、改正TCSA第4条副項目(a)にしたがい最小
データセットを提出することは要求されないが、改正TCSA発効後6カ月以内に、
第8条で規定される宣誓書を提出しなければならない。
 長官は、製造業者または加工業者が、同安全基準に適合しているかどうか
を決定し、特に免除されている場合を除き、新規の用途を認めないことに
なっている。
 下院の法案には、この条項に該当する31件(※※※)の化学物質(群)が
付記されている。

※※ 第4条、第5条、第8条、第13条、第33条が重要な改正箇所だと思われる。

※※※ アスベスト、ビスフェノールA,カドニウム及びその化合物、
ホルムアルデヒド、ノルマルヘキサン、鉛及びその化合物、メチレンクロライド、
6種のフタル酸エステル、トリクロロエチレン、塩化ビニルなど

【筆者注】下院案には、対象とする化学物質名が列挙されているが、上院案
には、同一名の条項はあるが、化学物質名の掲載はない。

[上院の改正提案]
第2条 目的
下院の提案にはない「目的」が、「本法の目的は、化学物質のリスクが適切に
理解され、管理されることを確実にすることである。」と規定されている。

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