1. 化学物質国際対応ネットワークTOP
  2. >メールマガジン
  3. >メールマガジン 第44号[附録]

メールマガジン

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
       化学物質国際対応ネットワークマガジン 第44号[附録]
           http://www.chemical-net.info/
               2012/10/19 配信
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
当附録は、2012年10月19日に配信した化学物質国際対応ネットワークマガジン
第44号で紹介した「米国労働安全衛生局(OSHA)危険有害性周知基準(HCS)」の
詳細及び大島輝夫氏による解説をお届けします。
--------------------------------------------------------------------------
<1 HCS 2012の構成について>
a) 目的
b) 範囲および適用
c) 定義
d) 危険有害性の分類
e) 記述された危険有害性コミュニケーションプログラム
f) ラベルと他の警告形式
g) 安全データシート
h) 従業員の情報と訓練
i) 商業秘密
j) 施行日

附則
A 健康有害性基準(義務)
B 物理的危険有害性基準(義務)
C ラベル要素の配置(義務)
D 安全デーシート(義務)
E 企業秘密の定義(義務)
F 危険有害性分類のガイダンス:発がん性について(非義務)

<2 HCS 2012の改正のポイント>
(1)従来のHCSと今回の改正(大きな内容変更)
HCS 1994は、成果主義(performance oriented)を基に、結果がよければそれで問
題がないとして、ラベル、安全データシート(SDS)の内容等を具体的に定めてい
ませんでした。しかし今回の改正では、performance oriented を改めて、具体的
に分類基準、ラベル、SDSをGHSに準じて定めました。

(2)HCS 2012の特記事項
1)HCS 2012はHCS 1994を改正したもので、HCS 2012で改正されない条項はそのま
ま有効です。
例として、ラベル及び法の適用除外があります。ラベルの適用除外として、例えば、
「殺虫剤殺菌剤殺鼠剤法(FIFRA)」で定義される農薬で表示が定められている物
質や、「有害物質規制法(TSCA)」の表示規則の対象等6項目はラベルの適用除外
です。規則の適用除外としては、例えば、固形廃棄物処理法で定められた有害性廃
棄物等があります。ここで、ラベルの適用除外と、規則の適用除外を区別している
ことに注意が必要です。農薬類、TSCA対象物質は、ラベルの適用除外には含まれま
すが、HCS2012の適用除外には含まれません。したがって、HCS1994で定められた従
業員の訓練義務等は、HCS1994に従います。
【ラベルの定義】危険有害性化学品の容器に示すまたは貼られている何らかの記載
物、印刷物、または図表を指します。
【容器の定義】 危険有害化学品を入れる何らかの袋、樽、壜、箱、缶、ボンベ、
ドラム、反応容器、貯蔵タンク等を指します。本規則の目的のためには、パイプ、
配管システム、エンジン、燃料タンク、自動車の他の作動システムは容器と見なさ
れません。
【輸入者の定義】HCS 1994の条文が改正されていない条項ですが、日本から輸出す
る場合に注意が必要です。

2)輸入者の定義は特殊です。
米国の関税地域内の従業員を有し、国内の流通業者または雇用者に他国で製造され
た化学品を供給する目的で、有害化学物質を最初に受領する企業を指します。これ
は通常の輸入業者の概念とは異なっています。なお、ラベル及びSDSには、次のよ
うに輸入者名を書くことが定められています。
「Name, address, and telephone number of chemical manufacturer, importer, 
or other responsible party」
ここには「or other responsible party」とあるため、必ずしも輸入者の定義に
従った輸入者名を書かなくてもよいと思われます。これに対して、EUのCLP規則にお
ける輸入者の定義は、「輸入に対して、責任を負う、EU共同体に所在する全ての自
然人または法人を意味する。」とあります。

3)HCSの義務の対象は、化学品製造業者または輸入者、 全ての雇用者、流通業者
です。ここで、雇用者が義務の対象であることに注意が必要です。

4)HCS 2012 の施行期限
●実施履行期日:2013年12月1日
要求事項:新しいラベル要素とSDS様式について、従業員を訓練すること。
対象:雇用者
●実施履行期日:2015年6月1日
要求事項:この最終規則の全ての条項の遵守すること。
対象:化学品製造業者、輸入業者、流通業者、雇用者。ただし、それ以外は含みま
せん。
●実施履行期日: 2015年12月1日
要求事項:化学品製造業者、輸入者によりラベルされた容器をGHSラベルでなけれ
ば、輸送してはならない。
対象:流通業者
●実施履行期日:2016年6月1日
要求事項:必要に応じて、職場の代替するラベルおよびハザードコミュニケーション
プログラムを更新し、新たに確認された物理的または健康ハザードに対して追加の
従業員訓練を実施します。
対象:雇用者
(注:上記に記載された有効完了期日までの過渡段階では、HCS2012または現在の
基準に従ってもよい。)

5)雇用者の履行期日に注意:
雇用者は、2015年6月1日までに全ての条項を遵守しなければならなりません。すな
わち、HCS2012に従ったラベル表示した容器を保管し、SDSを作業場に保管しなけれ
ばなりません。違反すれば、雇用者は行政処罰の対象となります。したがって、米
国に化学品を輸出する場合、今からHCS 2012に従ったラベル表示した容器を用いて
輸出することが望まれます。また、なるべく早く、HCS 2012に従ったSDSを輸入者
に送付することが望まれますが、前述のとおり輸入者については注意が必要です。

6)HCS 2012はGHS改訂第3版に従っています。しかし、GHSは2年ごとに改正される
ため、OSHAはその改良の内容に応じて対応します。

7)HCS2012とGHS改訂第3版の主な比較
・GHS改訂第3版は輸出されない包装品のラベルについて、所管官庁は黒枠を使用す
る許可をあたえることができるとありますが、HCS 2012は赤い枠を用いることを義
務づけています。
・小容量の包装のラベル表示については、例外を認めず、荷札を付けて既定のラベ
ル表示を行います。
・HCSはGHS のhealth hazard categories から次の事項を省略しています。
Acute toxicity:category、oral、dermal、inhalation 5、Corrosion/irritation、
skin/irritation、category 3、Aspiration toxicity category 2
・Physical hazard のクラスとカテゴリーは全て含みます。
・環境ハザードは含みません。

8)ACGIH(米国産業衛生専門家会議)の最新のTLV(許容限界値)がSDSの
section 8に要求されています。記載されている化学物質は、HCS 2012の対象とな
りますが、TLVは毎年追加されるので注意が必要です。

9)発がん性
IARC(国際がん研究機関)はGHSに引用されていますが、NTP(米国国家毒性プログ
ラム)の報告、OSHAの発がん性指定物質も対象となります。IARCは年数回新しい報
告が発表されることから注意が必要です。これらについては、NITE(製品評価技術
基盤機構)のCHRIP(化学物質総合情報提供システム)等が、最新の情報を記載し
ているため参考になります。また、附則Fに、非義務となっていますが、発がん性
分類のガイダンスがあります。

10)対象物質リスト
HCSは対象物質リストおよびそれらの分類結果を公示していません。試験も要求し
ていません。関連情報にしたがい自己判断で分類します。ただし、ACGIHのTLV記載
物質、発がん性に分類される物質は自動的に対象となります。

11)HCS2012、CLP、GHS改訂第3版の分類の比較
【Flammable gases】
GHS:1/2 (Unstable gas:A/B)、HCS:1/2、CLP:1/2
【Aerosols】
GHS: 1/2/3 (unflammbable aerosol:3) 、HCS:1/2、CLP:1/2
【Flammable liquids】
GHS:1/2、HCS:1/2/3/4、CLP:1/2/3
【Acute toxicity】
GHS:1/2/3/4/5、HCS:1/2/3/4、CLP:1/2/3/4
【Eye damage/irritation】
GHS:1/2A/2B、HCS:1/2A/2B、CLP:1/2A
【Toxic to reproduction】
GHS:1A/1B/2、HCS:1A/1B/2、CLP:1A/1B/2(for defects on or via lactation 
cut off value 0.1% in US、0.3% in EU)
【Aspiration liquid】
GHS:1/2、HCS:1、CLP:1
【Environment Acute hazard to the aquatic environment】
GHS:1/2/3、HCS:(not requested)、CLP:1
【Chronic hazard to the aquatic environment】
GHS:1/2/3/4、HCS:(not requested)、CLP:1/2/3/4
【Hazard to the ozone layer】
GHS:1、HCS:(not requested)、CLP:1

12)HNOC(Hazard Not Otherwise Classified:分類されない危険有害性)
例えば、粉じん爆発の危険性等のように、GHSでは危険有害性に分類されるがHCSで
は分類されない場合には、SDSと従業員の訓練が要求されます。

13)CBI(営業秘密情報)
CBIは、HCS 1994 の条件に混合物の混合割合もCBIと見なされることが加えられま
した。CBIの条件が満たされるならば、いかなる物質も物質名をCBIとすることは可
能です。ただし、緊急事態には、医療関係者等に開示が必要等、開示の条件が示さ
れています。

14)査察と罰則
OSHAは全国に10の支所があり、事業所の査察を頻繁に行っています。違反項目の
3番目にHCSが規定されています。査察方針(最近改正されている。)に基づいて、
違反の内容は、「故意」、「重大」、「取るに足らない」、「再犯」等の6種類に
分類され、各々の違反に対して行政罰を科しています。例えば、「故意」の罰金は
1件当り5,000〜70,000ドルとなっています。査察項目には、作業場で用いられてい
る化学物質のリストの整備、これらの化学物質のラベル、SDS等の項目が対象と
なっています。査察の対象となった事業所数は、2010年は40,993件です。違反件数
は96,742件、そのうち重大違反件数は74,885件でした。同一事業所における違反件
数が複数あるため、違反件数は査察件数より多くなっています。これらの結果(事
業所名、違反件数、罰金額)は、OSHAのウェブサイトに公表されています。併せて、
査察のマニュアル、査察時の企業の対応のマニュアルも公表されています。
HCS 2012対応のマニュアルは、現在準備中です。

<3 定義の改正>
●追加された定義(主なもの):Classification、Hazard category、
Hazard class、Hazard statement、HNOC、Label elements、Pictogram、
Precautionary statements、Product identifier、pyrophoric gas、
Safety data sheet
●削除された定義(主なもの):Combustible liquid、Compressed gas、
Explosive、Flammable、(Aerosol flammable、Gas flammable、Liquid flammable、
Solid flammable)、Flash point、Hazard warning、Identity、
Material safety data sheets、Organic peroxide
●修正された定義(主なもの):Chemical、Chemical name、Hazardous chemical、
Health hazard、Label、Mixture、Physical hazard、Trade name

<4 ラベルおよび他の警告のフォーム>
化学物質の製造業者、輸入業者、流通業者は、危険有害性化学物質を含む各容器は
ラベル、付箋、またはマークがついていることを確かめなければなりません。
(1)ラベルの要素はGHSと同じ
Product identifier
Signal word、注意喚起語(例:危険)
Hazard statement(s)、危険有害性情報(例:飲み込むと生命に危険)
Pictogram(s)、絵表示(例:赤い四角の枠の中の骸骨マーク)
Precautionary statement(s)、注意書き
Name、address、telephone number of the manufacturer、importer、
or other responsible party
上記の定義に従った輸入者の名前を書くことが義務づけられていることに注意が必
要です。ただし「or other responsible party」とあります。
(注:JIS Z 7253:2012「GHS に基づく化学品の危険有害性情報の伝達方法−ラベル、
作業場内の表示及び安全データシート(SDS)」は、GHS改訂第4版に準拠しているた
め参考になります。)
(2)GHSの9個のラベル要素のうち、水生環境有害性のラベルは義務ではありません。
(注:更新情報を入手した後、6カ月後には容器のラベル更新が必要です。)

<5 安全データシート>
  GHSの安全データシートの16項目
1  化学品及び会社情報
2  危険有害性の要約
3  組成及び成分情報
4  応急措置
5  火災時の措置
6  漏出時の措置
7  取扱い及び保管上の注意
8  ばく露防止及び保護措置
9  物理的及び化学的性質
10 安定性及び反応性
11 有害性情報
12 環境影響情報
13 廃棄上の注意
14 輸送上の注意
15 適用法令
16 その他の情報
これらのうち、12、13、14、15の4項目は任意です。
(注:SDSの更新、化学物質の危険有害性、それに対する安全対策について、何ら
かの有意義な新しい情報を入手した時は、SDSは3カ月以内に更新することが必要
です。ラベルの更新や新しい有意義な情報を入手した時は6カ月以内に更新するこ
とが必要です。定常的に更新することは要求されていません。)

<6 混合物>
全体の試験データがあればそれを用います。混合物の組成の有害性データのカット
オフ値、ラベルとSDSのカットオフ値は同じです。
(有害性クラス)
Respiratory / Skin sensitization ≧0.1%
Germ cell mutagenicity(Category1) ≧0.1%
Germ cell mutagenicity(Category2) ≧1.0%
Carcinogenicity ≧0.1%
Reproductive toxicity ≧0.1%
Specific target organ toxicity(single exposure) ≧1.0%
Specific target organ toxicity(repeated exposure) ≧1.0%
Specific target organ toxicity(Category 3) >20%

<7 米国他省庁のGHSの対応>
OSHAは、農薬、消費者製品、輸送等に関する法制度にHCS 2012が適用されることを
期待しています。これに関し、OSHAと米国環境保護庁(EPA)は協議を行いました
が、EPAは農薬のラベル表示をGHSに改正していません。
(1)米国環境保護庁(EPA)農薬
OSHAとEPAは協議を行いましたが、結果としてEPAは連邦殺虫剤殺菌剤殺鼠剤法
(FIFRA)のラベル表示をGHS対応に改正していません。MSDSについても、FIFRAの目
的から、GHSの内容は不十分と考えています。したがって、FIFRAは、ラベルもMSDS
も現行を維持します。
(2)米国消費者製品安全委員会(CPSC)消費者製品
CPSC職員は、連邦有害性物質法(FHSA)とGHSとの比較作業を終え、改正が必要かを
検討中です。
(3)米国運輸省(DOT)輸送
DOTは、GHSの大部分の要素を取り入れています。物理的危害、急性毒性の最も重大
な障害を含め、絵表示(ピクトグラム)に取り入れ、さらに環境毒性の採用も、
国際海事機関(IMO)の検討を待っています。

(以上)

--------------------------------------------------------------------------
■本マガジンは、平成24年度環境省請負業務に基づき、一般社団法人海外環境協力
 センターが運営しております。
  一般社団法人海外環境協力センター(OECC)
  →http://www.oecc.or.jp/
  環境省総合環境政策局環境保健部
  →http://www.env.go.jp/chemi/index.html
■原則として、毎月1回の配信を予定しています。
 メールの配信については、回線上の問題(メールの遅延、消失)等により
 届かなかった場合の再送は行いませんので、予め御承諾の上、ご利用ください。
■化学物質国際対応ネットワークマガジンバックナンバーは、下記ウェブサイトを
 御覧ください。
  →http://www.chemical-net.info/mailmg_bn.html
■本メールマガジンの配信停止・配信先e-mailアドレスの変更及び御意見・御要望
 等は、以下のウェブサイトより御連絡下さい。
  →http://www.chemical-net.info/contact.html
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
発行元:一般社団法人海外環境協力センター
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ページの先頭に戻る↑