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化学物質国際対応ネットワークマガジン 第127号
http://chemical-net.env.go.jp/
2025/3/13配信
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このメールマガジンは、化学物質国際対応ネットワークのウェブサイトから
配信登録をされた方を対象にお送りしています。
第127号は、以下の内容をお送りいたします。
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【1】欧州における最新動向 |
【2】米国における最新動向 |
【3】オーストラリアにおける最新動向 |
【4】台湾における最新動向 |
【5】中国における最新動向 |
【6】韓国における最新動向 |
【7】シンガポールにおける最新動向 |
【8】フィリピンにおける最新動向 |
【9】あとがき |
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【1】欧州における最新動向
(1)化学物質の分類、表示、包装に関する(CLP)改正規則を発行
欧州化学品庁(ECHA)は2024年12月10日、化学物質及び混合物の分類、表示および包装に
関する規則 (EC)No1272/2008 (CLP規則) を改正する規則 (EU)No2024/2865が施行された
ことを発表しました。また欧州委員会(EC)からも改正CLP規則について、下記ウェブサイト
にて改正の概要を発表しております。
ECHA news
https://echa.europa.eu/-/revised-rules-for-classification-labelling-and-
packaging-enter-into-force
European Commission
https://environment.ec.europa.eu/topics/chemicals/classification-labelling-
and-packaging-chemicals_en
(2)PIC規則規制対象物質に40種類の有害化学物質を追加
欧州ではロッテルダム条約規制対象物質についてPIC規則((EU)No649/2012)によって
管理を実施しておりますが、欧州委員会(EC)は2025年1月7日に、PIC規則附属書Iに40種類の
化学物質を追加することを発表しました。EU域内において、附属書Iに記載の規制対象物質を
輸出する者は、事前にECHAに通知を行う必要があります。欧州委員会はPIC規則附属書Iを毎年
更新し、現在321物質群が対象となっております。対象物質リストは下記ウェブサイトを参照
ください。
ECHA news
https://echa.europa.eu/-/40-hazardous-chemicals-added-to-pic-exporters-can
-start-notifying-authorities-now
ECHA PIC規制対象物質リスト
https://echa.europa.eu/information-on-chemicals/pic/chemicals
(3)高懸念物質(SVHC)の候補リスト(Candidate List)に5物質を追加、1物質を更新
ECHAは2025年1月21日、新たに下記5物質を高懸念物質(SVHC)の候補リストに追加しました。
1. 6-[(C10-C13)-アルキル-(分岐、不飽和)-2,5-ジオキソピロリジン-1-イル]ヘキサン酸
【EC No. 701-118-1:、CAS No.:2156592-54-8】
2. トリフェニルホスホロチオエート【EC No. 209-909-9:、CAS No.:597-82-0】
3. オクタメチルトリシロキサン【EC No. 203-497-4:、CAS No.:107-51-7】
4. パーフルオロトリプロピルアミン【EC No. 206-420-2:、CAS No.:338-83-0】
5. トリフェニルチオリン酸とtert-ブチル化フェニル誘導体の反応物【EC No. 421-820-9:、
CAS No.:192268-65-8】
上記1の物質は潤滑剤、グリース、金属加工油に使用されており、生殖毒性が懸念されて
います。2の物質は、潤滑剤やグリースとして使用されており、5の物質については、
REACHでの登録がありませんが、2の代替物質としての使用を防ぐため、本リストに追加され
ました。2の物質は、難分解性、生体蓄積性、毒性が懸念されています。3の物質は化粧品、
パーソナルケア製品、医薬品、洗剤、コーティング剤、非金属表面処理剤、シーラント、
接着剤用途等で使用され、4の物質は電気・電子・光学機器等の製造に使用され、同物質とも
難分解性と生体蓄積性が極めて高いこと(vPvB)が懸念されております。
加えて、トリス(4-ノニルフェニル、分岐鎖および直鎖)フォスフェート【EC No. -:、
CAS No.:-】はすでにSVHCの候補リストに「4-ノニルフェノール、分岐鎖および直鎖
(4-NP)が0.1wt%以上含む」という条件付きで収載されておりました(2019年7月16日)が、
今回の更新により、4-NPの含有に関わらず、環境に重大な影響を与える内分泌かく乱性が
懸念されることから、条件が削除される更新が行われました。同物質は、ポリマー、接着剤、
シーラント、コーティングに使用されております。
今回の第32次SVHCの候補リスト確定により、247物質群が収載されました。
なお、SVHC該当物質は、REACH規則に基づき、アーティクル(成形品)中に0.1wt%を超える
濃度を含有する場合、供給者は顧客や消費者に情報提供する必要があります。またアーティクル
中にSVHC該当物質を含む場合、アーティクルの輸入業者及び生産者は、リストに収載された日
から6か月以内にECHAに届け出る義務があります。
また廃棄物枠組み指令に基づき、企業は生産する製品に0.1wt%を超える濃度でSVHC該当物質を
含有する場合、ECHAに通知する必要があります。またEUエコラベル規制に基づき、SVHCを含む
製品はエコラベルが付与されません。
ECHA News
https://echa.europa.eu/-/echa-adds-five-hazardous-chemicals-to-the-candidate-
list-and-updates-one-entry
(4)欧州委員会(EC)は包装及び包装廃棄物に関する規則を発表
ECは2025年1月22日、欧州連合官報にて包装及び法則廃棄物に関する規則(No 2025/40)を
発表しました。同規則はPPWR(packaging and packaging waste Regulation)規則と呼ばれ、
規則(EU)2019/1020および指令(EU)2019/904を改正し、指令94/62/ECを廃止するもので、
その主な目的は次の通りです。
• 2040年までに、加盟国1人当たりの包装廃棄物を2018年比で15%削減する。使い捨てや過剰
包装の包装品など、不必要な包装を削減することによって達成する。
• 2030年までに包装を完全にリサイクル可能にし、さまざまな材料のリサイクル性を高めるた
めの具体的な規則と基準を設ける。
• 企業にテイクアウトの飲み物や食事など、一部の製品を再利用可能または詰め替え可能な
パッケージで提供することを義務付けることで、再利用または詰め替えを促進する。
• 包装形式を標準化し、再利用可能な包装のラベル表示を改善することで、消費者がより
持続可能な選択をしやすくする。欧州委員会の環境総局が規則の実施を監督する。
この規則の発効日は2025年2月11日です。
欧州連合官報
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=OJ:L_202500040&pk_campaign
=todays_OJ&pk_source=EUR-Lex&pk_medium=X&pk_content=Environment&pk
_keyword=Regulation
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【2】米国における最新動向
(1)有毒物質規制法(TSCA)に基づき5つの化学物質のリスク評価を開始
米国環境保護庁(US EPA)は2024年12月18日、有毒物質規制法(TSCA)に基づき、既知または
可能性のある発がん性物質 5 種類として、アセトアルデヒド【CAS No.75-07-0】、アクリロニ
トリル【CAS No.107-13-1】、アニリン【CAS No.62-53-3】、4,4'-メチレンビス (2-クロロア
ニリン) 【CAS No.101-14-4(MBOCA)】 、塩化ビニル【CAS No.9002-86-2】を高優先度物質
(HPS)として、リスク評価を開始することを発表しました。
米国環境保護庁(US EPA)
https://www.epa.gov/newsreleases/epa-begins-five-chemical-risk-evaluations-under
-toxic-substances-control-act-starts
(2)有害物質排出目録(TRI)にPFAS9種を追加
US EPAは2025年1月3日、有害物質排出目録(TRI)の化学物質リストに、下記のパーフルオロ
アルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)9種類を追加することを発表しました。
TRI報告の対象となるPFASの総数は205になりました。
• パーフルオロデカン酸アンモニウム(PFDA NH4)【CAS No.3108-42-7】
• パーフルオロデカン酸ナトリウム(PFDA-Na)【CAS No.3830-45-3】
• パーフルオロ-3-メトキシプロパン酸【CAS No.377-73-1】
• 6:2 フルオロテロマースルホン酸 【CAS No.27619-97-2】
• 6:2 フルオロテロマースルホン酸アニオン 【CAS No.425670-75-3】
• 6:2フルオロテロマースルホン酸カリウム塩【CAS No.59587-38-1】
• 6:2フルオロテロマースルホン酸アンモニウム塩【CAS No.59587-39-2】
• 6:2 フルオロテロマースルホン酸ナトリウム塩 【CAS No.27619-94-9】
• 酢酸、[(γ-ω-パーフルオロ-C8-10-アルキル)チオ]誘導体、ブタンエステル
【CAS No.3030471-22-5】
TRIの化学物質リストに収載されている化学物質については、一定量以上製造、加工、または使用する
指定産業部門の施設から毎年 EPA に対し、環境への放出量または、廃棄物として管理された量に関する
データを報告する必要があります。2025年TRI年度報告の提出期限は2026年7月1日です。
US EPA
https://www.epa.gov/newsreleases/epa-adds-nine-additional-pfas-toxics-release-inventory
(3)カルフォルニアプロポジション65のリスト更新を発表
安全飲料水および有毒物質施行法(1986年、米国カルフォルニア州法プロポジション65)のもと、
カルフォルニア州はがんや生殖毒性を引き起こすことが懸念される化学物質についてリストを公開
しており、少なくとも年に1回以上更新を行うことを義務付けています。カルフォルニア州環境
保護庁有害物質管理局(OEHHA)は、このリストが2025年1月3日に更新されたことを発表しました。
カルフォルニア州環境保護庁有害物質管理局(OEHHA)
https://oehha.ca.gov/proposition-65/proposition-65-list
(4)有毒物質規制法(TSCA)に基づき、化学物質目録を更新
US EPAは2025年1月に化学物質目録(TSCAインベントリーリスト)を更新したことを発表しました。
リストには86,847物質の化学物質が収載されており、このうち42,495種がアクティブとなっています。
TSCAインベントリーリスト
https://www.epa.gov/tsca-inventory/how-access-tsca-inventory
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【3】 オーストラリアにおける最新動向
(1)AICISは化学物質インベントリーリスト更新
オーストラリアでは、工業化学物質導入機構(AICIS)が工業化学物質法(2019年)の下、
工業化学品の導入を管理していますが、AICISは2025年1月3日、更新されたインベントリーリストが
ダウンロード可能となったことを発表しました。プラットフォームでは工業用途でオーストラリアに
製造・輸入(導入)されている約40,000種類の化学物質を検索することができます。
オーストラリアAICIS
https://services.industrialchemicals.gov.au/search-inventory
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【4】台湾における最新動向
(1)台湾環境部化学物質管理署は、化学物質登録情報公開プラットフォームを更新
台湾環境部化学物質管理署は2025年1月1日、化学物質登録情報公開プラットフォームで
公開される化学物質情報を更新しました。
台湾化学物質登録情報公開プラットフォーム
https://tcscachemreg.moenv.gov.tw/Epareg/OpenData/content/NewChemistPage.aspx
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【5】中国における最新動向
(1)「輸入許可証管理対象貨物目録(2025年)」を公布
中国商務部は2024年12月31日、「中華人民共和国対外貿易法」、
「中華人民共和国貨物輸出入管理条例」、「オゾン層破壊物質管理条例」、「貨物輸入許可証
管理弁法」、「機械電気製品輸入管理弁法」、「重点中古機械電気製品輸入管理弁法」等の法律、
行政法規、規則に基づき、「輸入許可証管理対象貨物目録(2025年)」を公布し、通関商品番号を
公開しました。2025年1月1日より施行されました。
中国商務部
https://www.mofcom.gov.cn/zwgk/zcfb/art/2024/art_537eee01e42941b0a1f217f45943fd2b.
html
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【6】韓国における最新動向
(1)韓国化学物質確認書(LOC)を更新
化学物質情報処理システムのウェブサイトにて、韓国環境公団は2024年12月31日、
化学物質管理法に基づく化学物質確認書(LOC: Letter of Confirmation)の様式の
改訂を発表しました。2025年1月1日以降の提出は、改訂された様式を用いて提出する
よう呼びかけております。ただし、すでに化学物質管理協会に提出された様式は2025年
8月6日まで有効です。また、「化学物質の登録及び評価等に関する法律」第20条(有害
物質の指定)が2025年8月7日に改正される予定ですので、改正内容が反映された様式は、
後日公開される予定と発表されています。
韓国化学物質情報処理システムウェブサイト(お知らせ、2024年12月31日登録を参照)
https://kreach.me.go.kr/repwrt/portal/notifyList.do?BOARD_NO=&BOARD_DVSN=C&searchCondition=
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【7】シンガポールにおける最新動向
(1)環境保護管理法(1999年)に基づく塗料中のホルムアルデヒドの規制
シンガポールの国家環境庁(NEA)は、2026年1月1日より環境保護管理法に基づき、
塗料中のホルムアルデヒドについて、1)重量比で0.01%以上のホルムアルデヒドを含む
室内用塗料の現地消費用のための輸入、製造、販売について禁止すること、2)現地消費用
として輸入、製造、販売される、ホルムアルデヒド含有量が 0.01% 以上の屋外用途または
工業用途の塗料は、規定されたラベル要件に準拠する必要があること、等の規制を発表しました。
上記の規制は、再輸出用に輸入される塗料、または輸出目的で製造される塗料には
適用されませんが、輸出または再輸出の目的で、重量比で 0.01% 以上のホルムアルデヒドを
含む内装用塗料を輸入・製造する企業は、有害物質ライセンスが必要です。
シンガポール環境庁
https://www.nea.gov.sg/docs/default-source/hs/control-of-formaldehyde-in-
paints-under-epma_20-dec-24.pdf
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【8】フィリピンにおける最新動向
(1)フィリピン化学物質目録(PICCS)の最新リストを公開
フィリピン環境天然資源省は2025年1月22日、(共和国法第6969、別名Toxic Substances
and Hazardous and Nuclear Wastes Control Act of 1990)及びその他の適用法、規則等に
基づき,フィリピン化学物質目録(PICCS)として知られる化学物質の最新インベントリーリストを
公開しました(DAO 2025-09を参照下さい)。
フィリピン化学物質目録(インベントリーリスト)
https://chemical.emb.gov.ph/?p=884
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【9】あとがき
本号では、欧州、米国、オーストラリア、台湾、中国、韓国、シンガポール、フィリピンに
おける化学物質管理の最新動向について紹介いたしました。
読者の皆さまより、記事内容に関するご意見、ご要望を募集しております。下記の「お問い合わ
せ」のページからお寄せください。
どうぞよろしくお願いいたします。
http://chemical-net.env.go.jp/contact.html
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■本マガジンは、令和6年度環境省請負業務に基づき、一般社団法人海外環境協力
センターが運営しております。
一般社団法人海外環境協力センター(OECC)
http://www.oecc.or.jp/
環境省大臣官房環境保健部
http://www.env.go.jp/chemi/index.html
化学物質審査規制法ホームページ(環境省化学物質審査室)
http://www.env.go.jp/chemi/kagaku/index.html
■原則として、隔月で配信を予定しています。
メールの配信については、回線上の問題(メールの遅延、消失)等により
届かなかった場合の再送は行いませんので、予めご承諾の上、ご利用ください。
■化学物質国際対応ネットワークマガジンバックナンバーは、下記ウェブサイトを
御覧ください。
http://chemical-net.env.go.jp/mailmg_bn.html
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等は、以下のウェブサイトよりご連絡ください。
http://chemical-net.env.go.jp/contact.html
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発行元:一般社団法人海外環境協力センター
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