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メールマガジン

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     化学物質国際対応ネットワークマガジン 第117号
          http://chemical-net.env.go.jp/
              2022/11/18配信
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このメールマガジンは、化学物質国際対応ネットワークのウェブサイトから
配信登録をされた方を対象にお送りしています。

第117号は、以下の内容をお送りいたします。
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【1】欧州における最新動向
【2】米国における最新動向
【3】中国における最新動向
【4】韓国における最新動向
【5】ベトナムにおける最新動向
【6】国際社会における最新動向
【7】あとがき
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【1】欧州における最新動向

(1)QSARツールボックス拡張による動物試験代替の化学物質評価の可能性拡大
  
 OECD QSARツールボックスに、OPERA(Open (Quantitative) Structure-active/
property Relationship App)拡張機能が追加されました。米国国立環境健康科学研
究所(NIEHS)と米国環境保護庁(US EPA)の間で進行中の連携によって開発された
OPERAは、物質の吸収、分布、および代謝に関連する特性を予測することができ、規制
目的での使用が可能な化学的性質を予測する堅牢なモデルを提供します。これにより、
リードアクロス(Read-Across)の正当性が強化され、in vitro試験結果の規制に沿
った使用が促進されます。
 この拡張機能は、QSAR Toolboxリポジトリから無料でダウンロードすることが可能
です。その拡張機能には、化学的危険性を評価するために重要な特性を予測するための
モデルが含まれます。この拡張機能を使用して化学データベースをスクリーニングし、
内分泌かく乱を引き起こす可能性のある物質を特定することが可能です。また、ユーザ
ーが急性経口毒性およびその他の規制関連特性を推定するのにも役立ちます。この新し
いアドオンは、ユーザーが動物実験を回避しながら、内分泌活性などの化学的性質を予
測するのに役立ちます。 
 QSARツールボックスは、欧州化学物質庁(ECHA)とOECDによって共同開発され、規
制当局を含め、世界中で約30,000人のユーザーがいます。ユーザーは、QSARツールボ
ックスリポジトリから拡張機能を追加し、その機能を拡張することができます。リポ
ジトリは現在、当局や民間企業によって開発された10以上の無料の拡張機能を提供し
ています。

ECHA News(英語)
https://echa.europa.eu/-/qsar-toolbox-extension-broadens-possibilities-for-animal-free-chemicals-assessment

(2)拡大する有害化学物質に関する情報共有

 EUは、2022年10月12日、欧州PIC(事前のかつ情報に基づく同意の手続き)規則の
下、化学物質の輸出が行われる前に、非EU輸入国当局にこれらの輸出通知を提供する
必要があります。それらには、PICにリストされている有害化学物質が輸出される場
所、用途に関する情報が含まれており、それらの危険な特性に関する情報が提供され
ています。これには、それらを安全に保管、輸送、使用、廃棄する方法が含まれます。

ECHA News(英語)
https://echa.europa.eu/documents/10162/1244645/pic_article_20_report_2020-2021_en.pdf/ee713a0c-d61b-d487-4a22-2d48f0a8d6c8?t=1665552967867

ECHA Report on the exchange of information under the PIC Regulation in 2020-2021(英語)
https://echa.europa.eu/-/sharing-of-information-on-hazardous-chemicals-continues-to-increase

(3)SCIPデータベースの評価公開

ECHAは、2022年上半期、高懸念物質(SVHC)を含有する成形品の欧州のデータベース
(SCIPデータベース)の評価を実施し、外部プロバイダーによって最終決定が行われ
ました。この評価の一環として、専門調査が組織され、廃棄物処理業者、NGO、加盟国
などの回答者が利用可能になりました。
同調査の目的は、SCIPデータベースの目的がどの程度達成されているか、ECHAがデー
タベースの設定と維持においてその義務を果たしたかどうかを評価することにありま
す。また、同調査では、過去のコスト評価と将来のSCIP関連の支出予測も提供されて
います。

ECHA News(英語)
https://echa.europa.eu/-/evaluation-of-scip-database-published

ECHA First ex-post Evaluation of SCIP(英語)
https://echa.europa.eu/documents/10162/6205986/scip_evaluation_report_en.pdf/2c677149-e876-f2b1-0ba7-3daca0a419ef?t=1665556373094

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【2】米国における最新動向

(1)EPAは、地域社会を化学事故から保護するための規制強化を提案

 2022年8月19日、米国環境保護庁(EPA)は、リスク管理プログラム(RMP)規則の
改訂を提案しました。同規則の改訂は、「化学事故防止規則によるより安全なコミュ
ニティ」として、脆弱なコミュニティ、特に事故率の高い施設の近くに住む人々を化
学物質事故から保護することを目的に提案されました。これは、既存のプログラムを
強化し、従業員の参加強化や安全決定に関するコミュニティの透明性など、これまで
同規則では対処されていなかった新しい保護手段を含みます。

 RMP規則は、事故率の高い産業施設に対し、死亡、負傷、財産や環境への損害、周辺
地域での避難を必要とする危険な化学物質の偶発的な空気放出の防止を要求すること
により、公衆衛生と環境を保護します。これら施設は、歴史的に汚染による不均衡な
負担を負ってきたコミュニティに隣接することが多いことから、同規則は、環境正義
を推進するためのEPAの重要な作業としてみなされています。

 EPAは、偶発的な化学物質の放出とその悪影響の頻度を減らすことにより、より安全
なコミュニティを促進する修正案を提案しています。RMP規制の強化提案により、一部
の施設は化学物質の事故、特に最も頻繁または重大な事故が発生するタイプの施設を
防止するためにより多くのことに対処する必要があります。2019年にRMP規則に加え
られた変更は、バイデン大統領の大統領令第13990号「公衆衛生と環境を保護し、気
候危機に取り組むための科学の回復」の下での行動とみなされます。

提案規則における重要事項は以下のとおりです。

➣  RMP施設の近くに住む地域社会に、より大きな保護を提供する。
➣  自然災害と気候変動のリスク評価のための規制施設の要件を強調する。
➣  多様なコミュニティに必要とされる言語で情報を利用可能にすることで、環境正義を促進する。
➣  事故率の高い特定の施設においては、より安全な技術と代替分析を必要とする。
➣  施設の事故防止要件における従業員の参加と意思決定の機会を促進する。
➣  事故実績の少ない施設については第三者監査を義務付ける。
➣  施設の計画と準備の取り組みを強化する。

米国環境保護庁 News(英語)
https://www.epa.gov/newsreleases/epa-proposes-stronger-regulations-protect-communities-chemical-accidents

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【3】中国における最新動向

(1)「第14次環境保健事業5か年計画」の発令

 中国生態環境部は、2022年7月22日、「第14次環境保健事業5か年計画」を策定しました。
化学物質管理に関し、第4章10項に以下内容が記載されています。

➣  「生態環境健康リスク評価に関する技術ガイドラインの概要」に基づき、データ品
  質評価や不確実性分析などの環境健康リスク評価の一般的な技術と方法について、基
  準と仕様を策定する。主要な地域については、主要産業、建設プロジェクト、化学物
  質や汚染された土地などの健康リスクの防止と制御を目的に、特定の生態学的および
  環境管理のニーズを満たすため、管理適用基準および仕様を策定し、一連の環境健康
  リスク評価のソフトウェアツールを開発する。
➣  主要な有毒および有害汚染物質をスクリーニングし、関連する基準を策定および改
  訂を行うための基礎情報を提供するため、健康リスク防止および管理に関する環境ベ
  ンチマーク研究を実施する。
➣  新規汚染物質の環境健康リスク評価のための技術基準体系の構築を探究し、残留性
  有機汚染物質、内分泌かく乱物質、抗生物質などの新規汚染物質の調査とモニタリン
  グ、危険性評価、暴露評価、リスク特性評価などの技術的方法を研究する。 


中国生態環境部 News(中国語)
https://www.mee.gov.cn/xxgk2018/xxgk/xxgk05/202207/t20220729_990245.html

中国生態環境部 第14次環境保健事業5か年計画(中国語)
https://www.mee.gov.cn/xxgk2018/xxgk/xxgk05/202207/W020220729350033305073.pdf

(2)主要新規汚染物質規制リスト(2022年版)に対する意見公募

 中国生態環境部は、2022年9月27日、「新規汚染物質管理行動計画」(国発[2022]
第15号)にしたがい、「主要新規汚染物質規制リスト(2022年版)」発行に向けた
「主要な管理および管理のための新規汚染物質リスト第一段リリース」の要件につ
いて、意見公募を開始しました。
 各機関、組織、企業、および個人は、2022 年10月28日までコメントまたは提案を
行うことができました。

中華人民共和国生態環境部 News(中国語)
https://www.mee.gov.cn/xxgk2018/xxgk/xxgk06/202209/t20220927_995054.html

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【4】韓国における最新動向

(1)化学製品安全法違反した製品に対して製造及び輸入禁止などの行政措置を実施

 環境部と韓国環境産業技術院は今年上半期(2022年1月~6月)に「生活化学製品及
び殺生物の安全管理に関する法律(化学製品安全法)」に違反した623の化学製品に対
して、製造および輸入禁止による流通を遮断したと明らかにしました。
 これら違反製品は、申告時は安全基準に適合していましたが、流通製品で有害物質
含有基準の超過を確認された68製品、市場流通前に安全基準確認・届出など手続きに
違反した543製品、申告番号などの表示基準に違反した12製品が含まれます。 
 実際流通した製品で有害物質含有基準を超えたと確認された68製品は、美容接着剤:26種、
タトゥー用染料:15種、光沢コーティング剤:7種、芳香剤:7種、その他:13種とな
ります。美容接着剤26製品では含有禁止物質であるメチルメタクリレート(MMA)が最
大517mg/kg、タトゥー用染料10製品ではニッケルが最大13.6mg/kg検出されました。
また、光沢コーティング剤、芳香剤、消臭剤など5つの製品は、ホルムアルデヒドの
安全基準を最大16.7倍超過したことが判明しました。

 安全基準未確認・未申告543製品は、香料:232種、ロウソク:133種、タトゥー用
染料:23種、その他:155種となります。特に、殺菌剤14製品は安全基準を確認され
ておらず、加湿器用抗菌・消毒剤1製品は未承認で流通したため、摘発対象となりまし
た。また、夏場消費量が多い「保健用殺虫剤」と「保健用忌避剤」の13製品は、安全
性に対する承認など適法な手続きを経ずに製造・販売をしたとして摘発されました。

 環境部はこれら製品が流通しないように、行政処分とともに大韓商工会議所で運営
する「危機商品販売遮断システム」に登録し、韓国オンラインショッピング協会にも
販売・流通禁止を要請しました。
 環境部は、回収命令や販売禁止措置などにおいて、回収できなかった製品が市場で
販売されないように、これら製品の再流通の有無を集中的に監視する予定です。

韓国環境部 News(韓国語)
http://me.go.kr/home/web/board/read.do?pagerOffset=140&maxPageItems=10&maxIndexPages=10&searchKey=&searchValue=&menuId=10525&orgCd=&boardId=1541630&boardMasterId=1&boardCategoryId=&decorator=

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【5】ベトナムにおける最新動向

(1)化学物質事故対応におけるベトナムの国家管理の強化

 商工省によって承認された化学物質事故防止および対応計画によると、化学品製造
企業は毎年、商工省、中央または地方の専門管理機関の協力の下、化学品事故対応訓
練を行う必要があります。商工省のフート省(Phu Tho省)当局は、事故対応訓練に
より、化学企業の安全作業に従事する従業員の対応能力を最大限に高め、人や環境へ
の影響を最小限に抑えることが可能になるとしています。
 2022年2月16日、商工省のフート省当局は、2022年の化学物質の国家管理に関する
規則、 化学物質事故の防止と対応のための訓練実施に関する計画No. 84/KH-SCTは
「訓練を組織し、関連機関、部隊、企業の指示と参加の下、プロセス、技術規則、専
門的スキルを適用し、事故に対応する準備ができているかどうかを評価し、想定され
る事象を処理する際に機関、部隊、企業間で相乗的に調整能力を促進する」目的にお
いて発行しました。同法的文書の対象範囲は、基本的に中央から地方レベルまでを対
象とし、化学品製造企業は法規に従って対応を行います。
 同省内の化学薬品製造会社5社は、2022年9月23日から25日まで、化学薬品事故を防
止、対応を行うための演習を実施しました。

ベトナム商工省化学物質庁(VINACHEMIA) News(ベトナム語)
http://www.cuchoachat.gov.vn/tin-tuc/phu-tho-tang-cuong-quan-ly-nha-nuoc-ve-ung-pho-su-co-hoa-chat.html

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【6】国連における最新動向

(1)ストックホルム条約残留性有機汚染物質検討委員会第18回会合(POPRC18)が開催

 2022年9月26日から30日まで、国連環境計画(UNEP)が事務局を務めている「残留
性有機汚染物質に関するストックホルム条約」(POPs条約)の「残留性有機汚染物質
検討委員会」(POPRC)の第18回会合がイタリア・ローマで開催されました。
 本会合では、デクロランプラス及びUV-328について、条約上の廃絶対象物質(附属
書A)への追加を締約国会議に勧告することが決定されました。また、中鎖塩素化パラ
フィン並びに長鎖ペルフルオロカルボン酸(PFCA)とその塩及びPFCA関連物質につい
て、リスク管理に関する評価を検討することが決定されました。クロルピリホスにつ
いては、更なる情報収集を行い、引き続き検討することとされました。

日本環境省 報道発表(日本語)
https://www.env.go.jp/press/press_00665.html

(2)ポストSAICM:戦略的アプローチと 2020 年以降の化学物質と廃棄物の
      健全な管理を検討する中間プロセスに関する第4回会合

 2022年8月29日~9月2日、ルーマニアのブカレストにおいて、戦略的アプローチと
2020年以降の化学物質と廃棄物の健全な管理(ポストSAICM)を検討する第4回会期間
プロセス会合が開催されました。議題は主に戦略的アプローチと2020年以降の化学物
質と廃棄物の健全な管理のための国際化学物質管理会議(ICCM5)第5回総会までに検
討する勧告の策定について議論が行われました。
 詳細は、本ネットワークウェブサイトにて連載中の環境省吉崎課長補佐執筆のコラ
ムにて、ご紹介いただく予定です。

SAICM事務局 News(英語)
http://www.saicm.org/Beyond2020/IntersessionalProcess/FourthIntersessionalmeeting/tabid/8226/language/en-US/Default.aspx

化学物質国際対応ネットワーク 専門家の気づき(コラム)
「ポストSAICMの枠組みの検討状況と今後の動向」(環境省環境安全課 吉崎仁志課長補佐)
https://chemical-net.env.go.jp/column_kizuki_yoshizaki.html

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【7】あとがき

 本号では、欧州、米国、中国、韓国、ベトナム及び国連における
化学物質管理の最新動向について紹介いたしました。  読者の皆さまより、記事内容に関するご意見、ご要望を募集しております。 下記の「お問い合わせ」のページからお寄せください。  どうぞよろしくお願いいたします。 http://chemical-net.env.go.jp/contact.html ───────────────────────────────────── ■本マガジンは、令和4年度環境省請負業務に基づき、一般社団法人海外環境協力  センターが運営しております。  一般社団法人海外環境協力センター(OECC) http://www.oecc.or.jp/  環境省大臣官房環境保健部   http://www.env.go.jp/chemi/index.html  化学物質審査規制法ホームページ(環境省化学物質審査室)   http://www.env.go.jp/chemi/kagaku/index.html ■原則として、隔月で配信を予定しています。  メールの配信については、回線上の問題(メールの遅延、消失)等により  届かなかった場合の再送は行いませんので、予めご承諾の上、ご利用ください。 ■化学物質国際対応ネットワークマガジンバックナンバーは、下記ウェブサイトを  御覧ください。   http://chemical-net.env.go.jp/mailmg_bn.html ■本メールマガジンの配信停止・配信先e-mailアドレスの変更およびご意見・ご要望  等は、以下のウェブサイトよりご連絡ください。   http://chemical-net.env.go.jp/contact.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 発行元:一般社団法人海外環境協力センター ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

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